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上映中

影裏 (2020)

監督
大友啓史
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  • みたログ 193

2.94 / 評価:176件

人間の多面性と切なく彷徨う恋

  • wxj***** さん
  • 2020年2月14日 20時03分
  • 閲覧数 1103
  • 役立ち度 10
    • 総合評価
    • ★★★★★

冒頭、今野は同じ職場のパート女性、西山に、仕事帰りに突然呼び止められる。
西山は、今野が日浅と親しくて、行方を探していることを知っていた。

そんな今野に、日浅はもう死んじゃったかもしれない、と話す。
彼女の告白に戸惑い、その根拠が知りたいと動揺を隠せない今野。

そして、物語は1年半前の2010年に遡り、今に至るまで何が起きたのかが展開。

会社員の今野は、東京近郊から転勤で移り住んだ盛岡で、同じ職場仲間の日浅と出会う。
今野はおとなしく、引っ込み思案な性格もあり、鬱屈した日々を過ごしていた。

無気力でけだるい今野の日常を、じっくり、ゆっくりと舐めまわすようなカメラワークで映し出す。
今野を演じた綾野剛の裸体、無防備な姿などありふれた日常を素のままに描くのだが。
この理由、後半で彼の本性が知れるにつれ、なるほど、と納得だった。

2人は自然と親しくなり、一緒に飲みに行ったり、釣りをしたりして交流を深めていく。
それはまるで、今野にとって遅れてやってきた青春の日々を過ごすよう。

今野にとって慣れない土地で、日浅はただ一人心を許せる存在だった。
心を閉ざしていた今野が、日浅の存在に救われ、癒されていく過程は微笑ましい。

だがある日、日浅は何も告げず突然退職し、姿を消してしまう。
イマドキ携帯電話も持たず、行動がいつも唐突で、どこかミステリアスな日浅。

掴みどころがなく、飄々として謎めいた男を、松田龍平が魅力的に好演。
何も話してくれなかったことに、ショックを受ける今野だったのだが。

しばらくして、日浅は突然、仕事の途中に立ち寄ったと、今野のアパートに現れる。

新たに互助会の営業の仕事を始めたと言い、また以前のような交流が始まる。
一緒に酒を飲んだり、釣りに行くなど共に過ごす時間が増えるうちに・・・。

原作を読んでいない事もあって、LGBTモノだとは知らず、ビックリだった。
今野の言動は、かなり匂わせるものがあったのだが、あの行動が決定的だった。

行為は拒みながらも、今野自体は否定せず、受け入れ理解を示すような日浅。
今野の行き場のない想いは、まずます混迷を深め、彷徨い迷ってしまう。

そして、元恋人が訪れ、再会を果たすことで想いを見つめ直し、確信する今野。

中村倫也が、驚くほど綺麗で、すぐに分からなかったくらい素敵だった!
双方共の切ない想いに、ドキドキしてキュンキュンしたわ。

ある日日浅は、互助会のノルマが厳しく、達成するために協力を依頼してくる。
日浅を信頼している今野は、彼の頼みにも気軽に応じるのだったが・・・。

やがて東日本大震災が起き、震災後の混乱を機に再び日浅は行方不明となってしまう。

日浅を探し始めた今野は、彼の父に捜索願を出すよう頼むが、断られてしまう。
やがて、これまで自分が見てきた彼とは、全く違う別の顔が見えてくる。

父から聞かされた、日浅の衝撃の過去の真実と、現在置かれた厳しい状況。
父の言葉に、今まで自分が知る彼は何者だったのか、唖然とする今野だった。

そして、同じく日浅の行方を追う西山からも、衝撃の事実を聞かされる。
彼女もまた、互助会のノルマ達成のために協力し、お金も貸していたと言う。
半ば諦め、半ば心配しているように、死んじゃったのかも・・・と話す。

さらに今野は、ある封書を見て日浅の狙いと正体を知ることになる。
大切な人の過ちも含め、全てを愛せるか?と見るものに問いかけてくる。

彼の裏切りというより、初めから彼はそのつもりだったのかもしれない。
そこは、はっきりと明かされないままだったが・・・。

ラスト、今野は別で本当の幸せを手にし、救いが見えるようでもあるが。
いまだ彼の幻を追い、どこかに彼の姿を探し、吹っ切れていない事が分かる。
それほど、今野にとって日浅は、かけがえのない唯一の尊い存在だった。

光が当たる裏には、必ず影が存在し、人間は色んな側面を持つもの。
自分が見ている姿が、その人の全てとは限らないし、全てを知る事は出来ない。

そんな人間の多面性、人間の奥深さや割り切れなさ、可能性を描きながら。
ある男の再生と、やり場のない切ない恋と友情の物語だった。

盛岡の静謐で美しい自然の風景と、繊細な心情がリンクしているような演出は良かったが。
風情はあるものの、全体的にのっぺりとして、ややだるい印象は残る。

綾野剛の、熱い感情を内に秘めた、抑えた演技は切なくて素晴らしかった。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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