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屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ (2019)

DER GOLDENE HANDSCHUH/THE GOLDEN GLOVE

監督
ファティ・アキン
  • みたいムービー 97
  • みたログ 238

3.35 / 評価:176件

被害者と加害者の過去と現在

  • TとM さん
  • 2021年5月31日 12時29分
  • 閲覧数 580
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

シリアルキラーの物語は好きだ。サイコパスではない連続殺人鬼もいるので、厳密にはサイコパス殺人鬼のストーリーが好きということになる。
彼らの思考の一端を知りたいと思うのだ。
しかし、常人では到底理解できるはずもなく、何となくこんな理由で凶行に及んでいるのかとぼんやりとわかった気でいる程度で、ただ彼らの語る言葉に「やべぇ」とおののくのみだ。

作られたフィクションのサイコパス殺人鬼の場合、視聴者に共感、または理解を促すためにどこか普通の人間らしさが出てしまい全くサイコパスではなくなってしまうことが多い。
連続殺人鬼だから、たくさん人を殺したからサイコパスなのではないのだ。
サイコパスとは極端な話「なぜ?」に対し常人が考えるまともな答えがない人のことだ。

その点やはり本物は違う。
自分が求める、「唐突さ」「極端さ」「罪悪感のなさ」「ヤバさ」がてんこ盛りであった。
しかもご丁寧に、それっぽい犯行の動機やバックボーンなどもほとんど語られない。
なんてったって、作品冒頭でもう誰かを殺した後なんだもの。

そのオープニングの殺害現場、まあホンカの部屋なんだけど、とにかく気色悪い。
部屋そのものもだが、そこにいるホンカが気色悪いのだ。
特殊メイクによる顔がというわけではなくて、雰囲気とか動きなどが気色悪い。
演じたヨナス・ダスラーという人は若い男前なんだけど、神がかった演技だったと思う。

そんな気色悪いホンカが、街の酒場で酒を飲む。
すでにホンカの裏の顔を見てしまった身からすると、普通に何の問題もなく溶け込めてしまっていることを恐ろしく思う。
あなたのお隣殺人鬼ですよ。カウンターのその男殺人鬼ですよ。こんな声かけをしても無視されるほどの溶け込みぶり。
すぐそこに潜む殺人鬼に誰も気付かず、誰も気にとめない。

それは被害者にも当てはまる。
忽然と姿を消しても誰も気付かず、誰も気にとめない。
他人に関心がないバーの普通の人々は、ホンカと同じように、ある意味気色悪いともいえる。

その関心のなさが、被害にあってしまった女性と被害を免れた女性の線引きに使われているのもまた面白い。
人の話を聞かず酒につられ自分のことだけを考えている人は殺されてしまった。
一方で、ギリギリで踏みとどまり他者に関心を持ち、人の話に耳を傾けられる人はからくも生き延びる。

滑らかに被害者に落ちていく女性の姿は、グラデーションのように一番若いペトラ(名前違うかな?)にまでさかのぼる。
ペトラは学校を留年したようだ。この後、人生を失敗し、酒に溺れ、他者を気にすることもない被害者女性のようになっていくのかもしれない。
しかし今はまだ引き返せる、やり直せる。

そして、ペトラとデートする少年はホンカの写し身だ。
一応ホンカは女性から相手にされず凶行に及んだとされているらしい。
若いペトラと少年が上手く生きてくれれば未来の被害者も加害者も生まれない。
ファティ・アキン監督の優しさが垣間見れた気がした。


最初に書いたようにサイコパス大好きなので面白く観ることができた。
しかし人によっては嫌悪感のみで全く面白くないかもしれない。それなりにグロいし、何より色んな意味でずっと気色悪いしね。

最後にこれだけは書きたい。
生肉をむさぼるロージー。ソーセージと一緒に吊るされるロージー。ホンカが妄想するロージーの姿は最高だった。
もう、まともな人の妄想を限界突破しちゃってるよね。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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