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アントラム 史上最も呪われた映画 (2018)

ANTRUM: THE DEADLIEST FILM EVER MADE

監督
マイケル・ライシーニ
デヴィッド・アミト
  • みたいムービー 41
  • みたログ 60

2.42 / 評価:48件

映画マニアの心をちょいとくすぐる

  • lry***** さん
  • 2020年2月22日 2時29分
  • 閲覧数 2745
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

モキュメンタリーであることは観客はわかっているのだから、あとはいかにそれらしく見せるかの勝負である。私はそこそこ楽しめたのだが、問題点もたくさんあって、それも込みでいろいろとマニア心をくすぐられた次第である。

『アントラム』(一九七九年の作品という設定)本編は、ストーリー展開はそう悪くは感じられなかった。姉と弟が、死んだ犬を地獄からよみがえらせるために穴を掘り続ける。実は地獄云々というのは姉の作り話だったのだが、嘘から出たまことというか、二人は本当に悪魔らしきものに襲われる。それに、たぶん悪魔崇拝の二人のいかれた男がからみ、話は異様な方向へ進む。

話の矛盾や人物の行動の矛盾は多々あるし、そもそもオープニングロールでのキャストやスタッフの名前が英語ではなく(ロシア語?)いったいどこの国が舞台なのか、よくわからない(ただ、姉と弟の会話は英語である)。

とはいえ、この程度のいい加減さは、「七〇年代の低予算ホラーなんだから、仕方ない」という言い訳ですべてすんでしまうし、逆に「七〇年代の低予算ホラーっぽいじゃないか」という、真実味すら生むのである。

さて、『アントラム』にちょいとけちを付けてみよう。けちと言っても、非難するのではなく、あくまでおもしろがるためである。

①<日本趣味> パンツ一丁で切腹しようとする、日本人のおじさんが意味もなく、唐突に出てくる。さらに、姉と弟がこしらえた五芒星の魔方陣に置かれた五つのアイテムのうち二つが、布袋像とインドのアスラ像である。布袋って……。

私は七〇年代のオカルト映画でこれほど明確に日本の要素を取り入れた作品を知らない。当時の悪魔を扱った洋画は、西洋の文化の範囲を決して出ていなかった(『エクソシスト』にしろ『オーメン』にしろ)。

たとえば『アナベル』シリーズの最新作には、鎧武者の幽霊が登場する。こういう日本趣味は、明らかにJホラーが欧米で市民権を得てから以降の現象だろう。『アントラム』のドキュメンタリー部分で、ある証言者が中田監督の『リング』に言及していたが、日本趣味を出した言い訳のように聞こえなくもない。

とはいえ、手元の資料を調べると、七〇年代にも日本を素材にしたホラーがなくはなかった。雑誌『スクリーン』の臨時増刊、『ザ・ホラー・ムービーズPART2』(八五年十一月発行)によれば、『殺しのマスク』という映画があったらしい。

七一年のイギリス作品。女性モデルを次々と殺害した画家が、邪教を信仰した日本人<チャイサン>の霊が乗りうつった<キモノ>を着たモデルに、復讐されるというストーリーである。紹介者によれば、B級どころかD級らしい。日本未公開にして、遠い昔にVHSでしか発売されていない。

②<モダンな編集> たぶん、二〇〇〇年代以降、映画は細かいシーンをたくさん積み重ねる方向へと進化した。逆に、七〇年代頃の映画は、ワンシーンが非常にゆったりとしていた。『アントラム』は、明らかに今風なのである。カットの転換が早く、編集が二十一世紀っぽい。

③<カメラワーク> カメラが魔物やケルベロスの視点になって、姉と弟を追うシーンがある(姉と弟はカメラから逃げまどう)。私がこの手法を初めて見たのは、誰もが知る八四年のサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』である。七九年の『アントラム』でこの手法が使われていたとするなら、先見の明がありすぎる。

④<ブリーフ男とひげ男> この二人のモデルは、ブッチャーという職業が一致するし、たぶん『悪魔のいけにえ』のソーヤー一家だろう(『いけにえ』は七四年の作なので、一応、辻つまは合う)。ただ、登場シーンでブリーフ男は、山羊を獣姦している(山羊が死んでいるなら、死姦・獣姦だ)。いきなりの鬼畜の所業である。『アントラム』は全年齢層が鑑賞できるG指定だが、いいのかな……。

さらに狂気の演出は、バフォメット(山羊頭の悪魔)の像の空洞に子供を入れ、蒸し焼きにしようとした点である。これがモキュメンタリーではなく、普通のホラーだったら、このシーンは相当に物議を醸しただろう。最近では『ドクター・スリープ』が、子供が苦しみながら殺害されるシーンを長々と続け、批判されている。

もっとも、蒸し焼きには前例がないではない。七六年、牧口雄二監督の『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』である。残酷な代官が隠れキリシタンを巨大なたぬきの瀬戸物の中に閉じこめ、火であぶるのである。この作品は、日本より先に海外でビデオ化DVD化されて人気を博しており(何と、ドイツ語バージョンまである)、もしかすると『アントラム』のデイビット・アミト監督も見たのかもしれない。

というわけで、いろいろと感慨があふれて来る映画であった。レビューを読むと非難している人が多いが、そう目くじら立てず、心に余裕を持って見るといいと思う。

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