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騙し絵の牙 (2020)

監督
吉田大八
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3.65 / 評価:1227件

解説

「盤上のアルファ」「罪の声」などの作家・塩田武士が、俳優・大泉洋を主人公に当て書きした小説を映画化。廃刊の危機に瀕した雑誌の編集長が、存続を懸けて奔走する。大泉が編集長にふんするほか、『勝手にふるえてろ』などの松岡茉優、『64-ロクヨン-』シリーズなどの佐藤浩市らが共演。『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八が監督を務め、『天空の蜂』などの楠野一郎と共同で脚本も手掛けた。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

大手出版社の薫風社で創業一族の社長が急死し、次期社長の座を巡って権力争いが勃発する。専務の東松(佐藤浩市)が断行する改革で雑誌が次々と廃刊の危機に陥り、変わり者の速水(大泉洋)が編集長を務めるお荷物雑誌「トリニティ」も例外ではなかった。くせ者ぞろいの上層部、作家、同僚たちの思惑が交錯する中、速水は新人編集者の高野(松岡茉優)を巻き込んで雑誌を存続させるための策を仕掛ける。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2020「騙し絵の牙」製作委員会
(C)2020「騙し絵の牙」製作委員会

「騙し絵の牙」「あてがき」された原作を映画用に「あてがき」し直した吉田大八監督の胆力

 人気作家・塩田武士氏が大泉洋をイメージして主人公を「あてがき」した意欲作を、吉田大八監督が大泉主演で映画化する企画だが、観れば観るほど奥行きのある構成に仕上がっている。それは、ひとえに魅力的な原作をいったんバラバラに解体し、それを映画として成立させるために改めて「あてがき」して再構築しているからといえば説明がつくだろうか--。

 オススメしたいのは、原作を読んでから映画を鑑賞するということ。原作がいかに秀逸であるかが体感でき、そのうえで映画の完成度の高さに更に唸らされる。ともに、非常に難度の高いことを何気ない風を装って、読者および観客に提示していることがよく分かるはずだ。

 舞台となるのは、斜陽産業と言われて久しい出版業界。大泉扮する速水は老舗出版社「薫風社」に中途入社してカルチャー誌「トリニティ」の編集長に就くが、社内は次期社長の座を巡って権力争いの真っただ中で、いきなり廃刊のピンチに陥る。派閥争いに巻き込まれた速水は、専務の東松(佐藤浩市)から無理難題を押し付けられるが、人当たりの良い雰囲気とは裏腹に「次なる一手」を派手に仕掛けていく。

 劇中で、出版人たちは悪戦苦闘している。書店に行かなくても簡単に自宅に欲しい本が届く時代にはなったが、それでも書籍、雑誌、それらを扱う書店の存在は人々に心のゆとりをもたらし、必要不可欠なものだと言い切ることができる。ここまで書いて、「あれ?」と思考が停止した。そう、これは完全に映画業界に話を置き換えて考えることができる話なのだ。

 大型書店はシネコン、街中にある個人経営の小さな書店はミニシアター。コロナ禍にあっては新作映画の公開延期が相次いだことでNetflixなど配信コンテンツが大躍進を遂げたが、出版業界も長年にわたりAmazonの脅威と対峙しており、まるで他人事ではない。効率化を優先させていくなかで、人の温もりが残ったものが如何にして生き残っていくのかという普遍的なテーマも内包されている。

 とはいえ、そんなに堅苦しく考えずとも、今作は吉田大八史上最高にエンタテインメントな作品に仕上がっている。なにせ、「大泉洋」らしさを封じられた大泉洋が松岡茉優、佐藤浩市、木村佳乃、國村隼、小林聡美ら芸達者な面々と“仁義なき戦い”を展開しているのだから、珠玉の113分をお約束する。(大塚史貴)

映画.com(外部リンク)

2021年3月25日 更新

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