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ザ・ピーナッツバター・ファルコン (2019)

THE PEANUT BUTTER FALCON

監督
タイラー・ニルソン
マイケル・シュワルツ
  • みたいムービー 180
  • みたログ 491

3.83 / 評価:357件

悪役は悪人ではなく、心の声は居場所を示す

  • dr.hawk さん
  • 2020年2月10日 23時15分
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

2020.2.10 字幕 イオンシネマ京都桂川


2019年のアメリカ映画
自閉症の少年がならず者の漁師と出会って人生を切り開いていくロードムービー&バディ映画
監督&脚本はタイラー・ニルソン&マイケル・シュワルツ


物語は自閉症の少年ザック(ザック・ゴッサーゲン)が老人養護施設を抜け出そうとするところから始まる

老婦人のローザマリー(アン・ウォーエンズ)に一芝居打ってもらってその隙に逃亡しようとするザック

だが目論見は見抜かれてあっさり捕まり「危険人物扱い」となってしまう


ザックの日常はカール(ブルース・ダーン)の部屋で「ソルトウォーター・レッドネック」というプロレスラーの映像を観ること

そして番組では「レスラー養成学校」の告知があり、ザックはレッドネックに会ってプロレスラーになることが夢だった

どうしてもそこに行きたいザックはカールの助けを借りて外に飛び出す

だがパンツ一丁で外に出てしまったザック

仕方なく近くの浜辺に行きボートの中に隠れてしまった


だがそこに漁師仲間とトラブってクビになったばかりの持ち主タイラー(シャイア・ラブーフ)がやってくる

タイラーはクビの腹いせにダンカン(ジョン・ホークス)の仕事道具に火を付けそのままボートで逃走

そして追っ手から身を潜める大事な場面でザックを見つけるのであった


物語はプロレスを学ぶためにレッドネックの養成学校に行きたいザックをタイラーが仕方なく連れて歩くところから動き出す

そして手掛かり追って彼らに近づく施設看護師のエレノア(ダコタ・ファニング)とダンカンたち

それらの追いかけっこ&ロードムービーとして描かれる本作は、「ザックの夢」によってそれぞれが「囚われ」から解放されるというテイストで紡がれていく


ザックは自閉症という「過去から現在に続く呪縛」に悩まされているように見えるが、実のところ「自分自身を檻に閉じ込めようとする偽善から羽ばたきたい」と考えていた

彼が「空を自由に飛ぶファルコン」をリングネームに選んだのはそう言った意思の現れであろう


またタイラーは自身の不注意によって兄を亡くした過去を持ち、そうした喪失と自責によって人生で痛めつけられることを選択する毎日を過ごしていた

自らを痛めつけ「悪玉」になろうとするものの、性根は変えられず本質的な喜びをザックとの旅によって思い出す


そしてエレノアは夫との死別後に愛を求めて彷徨う魂のようなもの

人生に意味を見出すために仕事に打ち込み仕事に誇りを持って生きてきたが、そこにあったのは相手を見ない自己愛だったことに気付かされる


この3人は似たもの同士で、自分を悪者にしようと自分自身を痛めつけている

ヒール(悪役)になろうとするもののヴィラン(悪人)にはならない

この役割を得ようとする行為はこれまでの人生が根源欲求や素養から目を背け続けてきたことを示唆している


タイラーがザックに課すルール「俺から遅れるな」「指揮は俺」、そして「荷物は交代して運ぶ」

それをすぐには覚えないザックだったが、この言葉は「心の中にある荷物(悲しみ)をわかちあう」という意味合いがあり、それは「どちらかだけが背負うものではない」という対等性が存在する

そしてそれらが分かち合えたとき、ルールは「パーティー」へと変わる

悲しみを分け合って、そしてそれを乗り越えた二人は「喜び」を分かち合おうとする

そしてそんな兄弟を見守るかのように母と女性の両方を兼ね備えるエレノアの存在があるように思えた

喜びを分かち合うのは大勢の方がいい

そんな理想郷へ向けて3人は旅を続けることになるのである


いずれにせよ、ザックを取り巻く人々に悪人はおらず、行き当たりばったりの旅はうまく行きすぎる

それでも「何とかなる」のは心の持ちようであって、はるか先の未来を見る前に「数歩先にある夢を叶えていくこと」の方が現実的である

人生に余裕がない状態で悲観的になるか開き直るかで人生はどう転ぶかもわからないし、それを考え込むことで正解が近づくとも言えない

とりあえず「心に従うこと」で思わぬ出会いや機会に出会うこともある

そしてそんな心が教えてくれるのは「ここへ行け」ではなく「ここに居てはいけない」である

そこが自分の居場所ではなければ心が教えてくれる

それを無視することで人生は更なる悪運に囚われるとも思うし、窮屈さは暴力的な自分を呼び覚ますだろう

心に余裕がある人生を過ごすために、今一度「心の声」に耳を傾けてはいかがだろうか?

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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