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ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏 (2018)

JEREMIAH TERMINATOR LEROY

監督
ジャスティン・ケリー
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3.27 / 評価:45件

アバターの余白に自分を見つけた少女の葛藤

  • dr.hawk さん
  • 2020年2月21日 20時12分
  • 閲覧数 526
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

2020.2.20 字幕 テアトル梅田

2018年のアメリカ映画
実在の作家ローラ・アルバートが処女作発表の際に架空の人物を作り上げていたスキャンダルを描いた実話ベースのヒューマンドラマ
原作はJ・T・リロイのビジュアルとして世に出たサヴァンナ・クヌープ著作の自叙伝『Girl Boy Girl : How I Became JT LeRoy』
監督はジャスティン・ケリー
脚本はジャスティン・ケリー&サヴァンナ・クヌープ


物語は2001年のサンフランシスコを舞台に紡がれる

兄ジェフリー(ジム・スタージェス)の元に越してきた妹サヴァンナ(クリステン・シチュワート)

ジェフリーにはパートナーかつバンド仲間のローラ(ローラ・ダーン)がいて、そのローラは実は「J・T・リロイ」というペンネームのベストセラー作家だった

1998年に出版された『サラ、神に背いた少年』を執筆したローラだったが、あろうことか「その小説は体験記で作者は18歳の男性」と偽っていた


サヴァンナを一目見たローラは彼女を気に入り自書を読ませる

そしてその反応を見て「サヴァンナこそがリロイのイメージキャラクターに合致する」として本人役をやらせるのである

簡単なバイトだと思っていたサヴァンナだったが本格的な書籍の宣伝をすることになり、また著書(2作目の『サラ、いつわりの祈り』)に映画化の話が出て深みにハマってしまう

対するローラも当初はノリノリだったが次第にサヴァンナがリロイとして人気を博し一人立ちをしてしまうことに苛立ちを隠せなかった


物語はどのようにして「サヴァンナはリロイに扮したのか?」という目線で描かれ、一応ローラ側の理由も添えられる

だがあくまでもサヴァンナ目線であり、サヴァンナがローラから聞いたことを前提に進んでいく


ローラがリロイを作り出した根源は「自殺相談ダイヤルにして虚像をつくり相談をした」というのがキッカケである

要は「友達の話なんだけど」と異性かつ若年にしたことがキッカケで「他人になる」ことへの足掛かりを見つけてしまう

そして著した処女作は自身の体験とリロイの反応が融合したかたちで記されていき、それが共感(同情)を生んでしまう

中年の女性の告発小説ではインパクトはなく、また詩的な表現(曖昧さ)の多用によって「登場人物に自分を当てはめられる」ようなテイストで赤裸々に綴られていく

この曖昧さは「読み手の解釈」によって現実的に補完されやすく、「自分の物語だ」と感じた瞬間に読者は虜になってしまう

いわゆる「代理者による内面の言語化」が読者を惹きつけて離さないのである


この映画では「リロイという名のアバター」に翻弄されるふたりを描いていて、サヴァンナが思うもの(著作を読んだイメージ=読者目線)とローラが思うもの(原作者としての体験)が乖離していく様子が描かれていく

映画監督を引き受けたいエヴァ(ダイアン・クルーガー)の目線もサヴァンナと同じ目線であり、それぞれが「空白であるはずのアバター」に自己投影していく

それによってサヴァンナは自分にないもの(アバターに存在する空間)が見え、ローラは自分の枠を超えたものに苛立ちを覚える

そこにはローラがサヴァンナに求める「リロイ像の抽象さ」が存在し、サヴァンナはその曖昧な部分を自己解釈で埋めていくことになるのである


そして物語には「世間のイメージを背負うリロイ像」というものが存在する

読者は好意的にそれを解釈し、客観視するメディアは懐疑的に感じる

その関心のない第三者から見えてくる「リロイ像の曖昧さ」はやがて暴露記事へと繋がっていく

人は見たいように物を見て、その固定観念の呪縛は強い

そう言った観点から彼女らの目論見は瓦解していったと言えるだろう


いずれにせよ、片側の目線だけという不公平さもあり大手を振るって絶賛とするのは微妙なラインである

それは「自伝映画にありがちな本人映像が出てこない」という側面も影響している

そしてサヴァンナは暴露された自身のイメージをこの映画によって美化しようとしていると思えるのである

この事件を詳しく知りたければドキュメンタリー『作家、本当のJ・T・リロイ』を観た方が良いかも知れない

この映画はあくまでも「自分探しをしていた少女がアバターを演じることによって自己欲求に目覚める」というヒューマンドラマの枠を超えていない

ゆえに実話ベースあるいは着想を得たというテイストに留まっている

だが‘ひとりの少女が陥る葛藤の物語としてはよくできているので、そのテイストでサヴァンナの苦悩にふれるというのはアリだと感じた

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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