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朝が来る
2020年10月23日公開

朝が来る

1392020年10月23日公開

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4.0

天才女優・蒔田彩珠がすべてを持って行った

全編にわたって画面からただならぬ緊張感がただよい、視聴者をストーリーに引き付ける吸引力が半端ない。原作は未読だが、直木賞受賞作というから脚本に芯があるのは当然か。 とにかく出演者達の入魂の演技が最大の見どころだ。永作博美も浅田美代子も素晴らしいが、ここはやっぱり蒔田彩珠に尽きる。彼女は女優としては紛れもない天才。弱冠19歳にしてあの憂いを帯びた表情とあれほど豊かな表現力は「アラ20」世代の若手の中では群を抜く才能だと思う。彼女が本作のすべてを持って行った感があり、これなら十分主演女優賞でもイケたと思わせるほど。この先いったいどんな女優になっていくのか実に楽しみな逸材である。 とはいえ、気になる点もある。ストーリーは永作パートと蒔田パートの二つに分かれているが、明らかに蒔田パートの比重が重い。本作本来のテーマは特別養子縁組の問題を浮き彫りにさせる社会派ドラマだと思う(そうだよね?)が、蒔田演じる少女ひかりのヘヴィな人生ドラマを軸足にしたせいでストーリーのバランスが悪く、途中から別の作品を観ているような収まりの悪さを感じた。エンディングの主題歌の一節に朝斗を絡ませる意図もあざとさが鼻につき、あそこまでやると興覚めというものだ。河瀨直美監督のやりたいことは理解できるが、140分もかけたわりにはとっ散らかし感が無きにしもあらずだ。 まあ満点とは言えないまでも、全体的に十分秀作といえるクオリティなのは間違いなく、ズシリと見ごたえのある日本映画を求めるなら満足できるだろう。

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