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朝が来る
2020年10月23日公開

朝が来る

1392020年10月23日公開

ひーろーかむおん

4.0

ネタバレ2人のお母ちゃん

…自粛生活中にWOWOWで映画三昧の日々を過ごし、レビューが一杯溜まってしまったので、ザックリと書くことにする。 あらすじは、WOWOWの解説の次のとおり。 『一度は子どもを持つことを諦めた夫婦、清和(井浦新)と佐都子(永作博美)は特別養子縁組の制度を知って男児を養子に迎え、朝斗と名付ける。 6年後、佐都子たちは朝斗の成長を楽しみにして暮らすが突然、朝斗の産みの親のひかりだと名乗る女性(蒔田彩珠)から電話がかかる。 そして彼女は“子どもを返すか金をくれ”と主張。 佐都子たちは6年前に14歳のひかりと会っていたが、なぜ今になってそんなことを言うのか。 また、電話のひかりは本当に彼女自身なのか……。』 特別養子縁組の制度を知って男児を養子に迎え入れる以前の、夫婦の不妊治療を受け続ける努力が痛ましい。 不妊というと、大概は女性の方に原因があるとされ、本作は男性の無精子症という設定もリアル感を増す。 で、2人は懸命に不妊治療を続けるのだが、一向にその兆しは見えず、精神的にも肉体的にも疲れ果ててしまい、子供を諦めて2人で生きていこうと決めるのだ。 そんな折、特別養子縁組制度を知るのだった。 佐都子はなかなか踏み切れないでいたが、清和は「この家には親になれる人がいる。親を必要としている子供のために行動を起こしてもいいじゃないか」と決断するのだった。 で、斡旋組織の「ベビーバトン」に登録して男児を授かるのだが、「ベビーバトン」という呼び名はうがったネームで、産みの親のひかりから育ての親の佐都子にバトンを託されたのだ。 で、産みの親のひかりのバトンを手渡さなければならなかった事情が描かれる。 中学生のひかるは同級生の男の子と恋に落ち、流れで妊娠してしまったのだが、知識が未熟なため、気付いた時には中絶も儘ならない時期に至ってしまっていたのだ。 母親は娘の不安を気遣うどころか世間体ばかりを気にして、学校は病気療養で休学し、県外で産んでから復学し、高校受験に励めばイイと罵るのだった。 で、「ベビーバトン」で出産までを過ごすことになるのだが、組織の責任者を浅田美代子が演じていて実にナチュラルで心地イイ。 で、ひかりは出産し、男児を佐都子にバトンタッチするのだった。 佐都子が初めて赤ちゃんを胸に抱いた時、タイトルの「朝が来た」と呟くのだが、先の見えない不妊治療という闇に覆われていた彼女にとって、正しく未来を切り拓く一条の光だったに違いない。 で、佐都子一家の幸せな日常が綴られるとともに、ひかりの出産後の日々も描かれるのだが、故郷に帰ってみれば、かつての彼氏は何食わぬ顔で学生生活をエンジョイしているし、実家に帰れば厄介者としか思われず、優しいお母さん?のいる「ベビーバトン」でバイトをしたいと願い出ると、組織は直に閉鎖するというのだ。 中卒では大した働き口がある訳もなく、それでも人間味のある店長の計らいで新聞配達店で懸命に働くのだが、同僚の女の子の保証人になっていたため借金取りに追われる羽目になり、新聞配達店をトンズラしてどこぞの店に努めたものの、そこで窃盗を働いて奈落の底にまっしぐらだ。 ザックリ書くと言いながら話が長くなってきたので、以下、端折ろう。 で、「子どもを返すか、金をくれ」の展開になり、しかも、朝斗(タイトルにマッチしたイイ名前)が養子であることを近所中にバラすと脅しをかけてくるのだった。 でも、佐都子は少しも動ぜず、既にオープンにされていると淡々と答えるのだ。 養子縁組の条件として、子供本人が理解できる年齢になったら、養子である事実を伝えるという決まりがあったのだ(この決まりは斬新に思えた)。 すると、ひかりは苦しまぎれに「あなたのできないことを私はした。私は産んだ」と捨て台詞を残して立ち去っていく。 それから暫くして、佐都子は傷口に塩を塗られたかのような痛みは去らなかったが、ひかりのうらぶれた身なりと絶望感に思いを馳せ、ひかりの最後のよすがまで絶ってしまったかのように思えて彼女の行方を捜すのだ。 ひかりは自らの命を絶とうとしていたのだろう。 そこへ、佐都子は朝斗を連れて現れ、泣き笑いの表情で「広島のお母ちゃんだよ」と朝斗を紹介する。 朝斗は素直に2人のお母ちゃんの存在を受け入れ、ひかりにも遂に「朝が来た」のだった。 このシーンの永作博美の演技には嗚咽が洩れそうになり、彼女を初めとして、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子のドキュメンタリーでも観ているかのような自然体の演技には魅せられた。 血の繋がりだけが家族ではない。 血の繋がりに甘んじて、家族であり続けることを疎かにしてはいけない、と諭されているような気持にさせられ、非常に見応えありの佳作で、4.2点といったところかな。 (メモ パスワードを忘れてトラブってしまったので、新たに開設した。 旧(fg9)レビュー数:4100件、新レビュー数80件目)

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