5.0点
私は、これ以上に現実と虚構の境目のない映画を知りません。 映画とはフィクション・ノンフィクション問わず詰まるところ虚構の映像化だと思っています。でも、朝が来るの役者の演技は限りなく現実。嘘っぽさが全くありません。 ベイビーバトンの説明会のシーンは実際に養子縁組を結んだ方が出演されているようで、ドキュメンタリーが映画に挿入されてるような感じなのですが、そこに映画とドキュメンタリーの境目のような違和感がまるでないのです。 これ以上に“現実”な映画ってあるんですかね?井浦新さんの飲み屋のシーンなんか感動するほど“現実”だった。あれは実際にハイボール何杯も飲んで撮影したらしいですね!どうりで呂律もリアルだと思った!笑 物語は二部構成で、前半は養子を迎える夫婦(栗原夫妻)の話、後半は養子の母親(片倉ひかり)の話です。 栗原夫婦とひかりは養子縁組の際に一度顔を合わせていますが、画面にひかりの顔は映らず、身なりの整った黒髪のとても若い女の子が夫婦に子どもを託して頭を下げる描写のみ映ります。 そして映画のちょうど真ん中頃、痛んだ髪と派手な格好をしたやつれた女性が 「私は片倉、子どもを返してほしい」 と、夫婦の前に現れるのです。 この女性はひかりなのか? なにがあったのか? 明らかに不穏なひかりの物語は、どこにでもいる普通の女子高生としてのひかりとして始まり、キラキラとした恋愛に繋がっていきます。 ここがもう死ぬほどツライ。 だって、予期しない妊娠と、突然栗原夫妻の前にひかりらしき困窮した様子の人物が現れることはもうわかっている。 彼女は落ちていく。 それが怖く、とてもツラかった。 確かにひかりの人生は壮絶でしたが、終わり方はとても綺麗です。決して鬱映画ではないし、鼻歌として挿入される歌だけで涙がでるような美しい映画です。 おすすめです!!