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男の争い

男の争い

DU RIFIFI CHEZ LES HOMMES/RIFIFI

118

Kurosawapapa

5.0

30分間セリフ無しの金庫破りに引込まれた

先日「バンク・ジョブ」を見て、とても面白かったのですが、 この「男の争い」の方が数十倍も面白いと書かれた記事を見つけ、とても気になっていた作品です。 数十倍ということはなくとも、かなり面白いし、どちらかというと名作の部類。 それも1955年製作、 そして本作は「フレンチ・フィルム・ノワール」です。 フィルム・ノワールとは、虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画の総称。 この映画は、第二次世界大戦後、アメリカの影響下で書かれたフランス産のハードボイルド作品です。 カンヌ映画祭で監督賞を授賞した本作は絶大な人気を博し、続編として「女の争い」「パナマの争い」「ニューヨークの争い」「東京の争い」が作られたそうですが、いずれも日本未公開。 刑務所から帰ってきたギャングのトニーは、仲間たちと宝石商の金庫破りを計画。 入念な準備と作戦によって、強奪は成功しますが、それを知った敵対ギャングは仲間の子供を誘拐し、男達の無慈悲な闘いが展開されていきます。 本作は、戦後のパリで、妖しい輝きを放つ暗黒街を舞台に、 まともに生きることができない男達の、ギリギリの生き様を描いています。 特に息を呑むのは、宝石店に侵入し金庫破りを敢行する一連のシーンです。 30分間、一切の台詞を排除し、 目配せと音のみで、映像に語らせる展開は、なんとスリリングなことか。 手に汗握る強奪のシークエンスは、実に見事なものがあります。 また、 コントラストの減り張りを強調したモノクロ映像は、 鮮明に、時代を生きた男達・女達の姿を切り取り、見る者を魅了します。 主役の大物ギャング、トニーを演じたのはジャン・セルヴェ。 家族を持たない孤独な男は、自分の中にある最後のプライドにかけて、 敵対するギャングに向かっていきます。 年齢を重ね弱々しく咳払いしつつも、眼光は鋭く、 暗黒街に生きる男の渋い背中を表現した、見事な演技を魅せています。 トニーは、子供を守ろうとする正義と優しさを持つ反面、 敵対する相手を憎み、裏切られた妻を鞭打ち、掟を守るために仲間を制裁する、 そんな冷徹な部分には、内なる怒りを感じます。 本作は、 ハリウッドで腕を磨き、研ぎすまされた映像で危険な男達の世界を描いていたジュール・ダッシン監督が、赤狩りによって理不尽にもアメリカを追われ、フランスに安住の地を求めた後、描いた作品です。 魅了されるストーリーもさることながら、 このギャングの世界に、どこかアメリカに対する監督の怒りを込めたような、 そんな渾身の一作だったのかもしれません。

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