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上映中

星の子 (2020)

監督
大森立嗣
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3.13 / 評価:502件

なぜ母は日記帳を次女に渡してしまったのか

新興宗教を題材にしたドラマはこれまでもありましたけど、それを親子関係にまで発展させたものは、初めて見た気がします。何にせよ、現世利益を売り物にするモノは、宗教と言うより、呪術か妖術だと思うのですが、まぁそれで本人が幸せになっていれば何もいうことはありません。
 とは言うものの、医者が見放したような病気になった我が子を見て、親が、藁をも掴む気持ちになるのは理解できます。実際は、子供の自然治癒力が病に勝ったとしても、そりゃ信じたくもなるでしょう。
 当然、幼い子供達は何の疑いもなく親に従うでしょうから、それが普通の生活となりますよね。でも、段々知恵はついてくるし、様々な人との触れあいの中で、ちょっと我が家は変だぞと気がつきますよね。
 それで長女はおじさんと一緒に、「金星の水」を、ただの水道水と入れ替えるなんてことをするわけです。プラシーボ効果なんていうのもあるから、信じていれば、ホントに体調は良かったのかもしれません。でも、当然両親は激怒しますよね。おじさんは目を覚ましてやろうという老婆心からしたことでしょうが、なんとそれに加担した長女も、他の家族と一緒におじさんを追い出してしまいます。これも理解できる行動です。精神的に自立していない子にとって、親は絶対的存在です。理屈では判っていても、虐待を受けている子供が親をかばうのと同じなのでしょう。しかし、後に長女の方は、次女を気づかいながらも、家を出てしまいます。それでも、自分に子供が出来たことを電話で報告するというのは、哀しい業みたいなものでしょうか。家族は捨てきれないのですね。
 一方、問題なのは次女の方です。たぶん誰もが、赤ちゃんの頃の泣き叫んでいる写真や今ならビデオを見せられながら、「あなたを育てるのは大変だったのよぉー。」なんて言われたことがあるでしょう。これを子供に対しては話すときは、笑い話とすべきです。そうでなければ、とても親から精神的に自立することなんてできるわけがありません。これは親に対する感謝の気持ちとは別物だと思います。
 にもかかわらず、あのような詳細な記録である日記帳を子供に渡してしまうとは!一体全体、どういう意図が親にあったのでしょうか。しかも、あの日記帳、私も愛用している10年日記というものだと推察しますが、3段目までしか記入がありませんでした。ということは、3歳までは書き込んで、それ以降は書くのをやめてしまったものを次女に渡したということですね。次女はそれを常に持ち歩き、おそらく何度も読み返し、空欄には、自ら大切なモノを、似顔絵を含め描き込んでいたのでしょう。これでは、親の精神的呪縛から逃れることは不可能です。両親の今の状態は、自らの原罪の為だと言うことが心に根強く残ってしまいます。たとえ新興宗教にのめり込まなくても、幼き頃の子育ての苦労の詳細を子供に伝えてしまうのは、精神的束縛ではありませんか?渡すならば、大人になってからでしょう。
 それでも、映画の中では、その日記帳をバラバラにするシーンが出てきます。揺れ動く思春期の頃、イケメン教師の対応や、あっけらかんとカッパだと思ったと言う友達を前に、なんとかしようとする心情の表れでしょうか?しかしその一方、あの新興宗教の研修会で、必死に母親の行方をさがす次女の振る舞いには、飛び立とうとして飛び立てない、複雑な思いを感じました。
 そんな、とてつもなく難しい役を、芦田愛菜は見事に演じてくれました。すべて自然体に見えるというのは、とんでもなく凄いことだと思います。間違いなく代表作となるでしょう。また要所要所に配された共演陣も見応えのある演技でありました。次女の幼年期を演じた粟野沙莉も、ホントに芦田愛菜の幼年期っぽい感じがしましたね。ただ、作品の構成としては、過去と現在を行ったり来たりするのが、少々煩わしく思いました。順々の展開でも良かったのではないかな?
 そしてラストシーン。家族三人で流星を眺めているところでエンドとなりますが、次女は何を願って星を見つめていたのでしょうか。とても印象的なエンディングでありました。
 しかしこの作品。たまに映画を見に行こうという人には不向きです。見終わった後、スッキリもしませんし、あ~面白かったという感情にも到りません。ゴットファーザーを見終わった後のように、眉間に皺を寄せたまま、劇場を後にするわけではありませんが、どこかモヤモヤした気分が残る作品ではあります。

詳細評価

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音楽

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