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PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR (2020)

監督
塩谷直義
  • みたいムービー 55
  • みたログ 239

3.80 / 評価:182件

TVシリーズのもやもやを吹き飛ばす爽快感

  • いくも さん
  • 2020年3月30日 0時27分
  • 閲覧数 1458
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

正直なところ、3期のTVシリーズは不満の多いものだった。新生1係は思いのほか魅力的だったが、とにかく敵側への疑問が尽きなかった。ビフロストとは何なのか、コングレスマンは何をしているのか、インスペクターの梓澤は何故こんなに自由に動き回っているのか…
話の進みも遅く、面白味に欠けているから集中して台詞を聞いていられない。だから余計に理解できないことが多かったのだろう。

しかし今回の映画はシンプル。梓澤が厚生省公安局ビルを占拠し、刑事課と都知事の小宮カリナの殺害を目論むというものだ。
梓澤がこんなことをしても犯罪係数が上がらない理由や、ビフロストの正体、法斑静火の目的など全てが明かされ疑問が解消される。
久しぶりの爽快感を味わい、鑑賞後はすっきりした気分になった。
映画館に行くことを迷う人はぜひアマプラで見てみてほしい。


特筆すべきは、ビル内の攻防戦ということで登場キャラクター全員に見せ場があること。
1係はもちろん、外務省メンバーや霜月、小宮カリナも奮闘する。

その中でも特に嬉しかったのは志恩の活躍だ。現場に出ていくことのない彼女はあくまでバックアップがメインだった。そんな彼女が敵に立ち向かい、身体をはって小宮カリナを守ろうとする。いつでも飄々としている彼女から初めて聞く本音に思わず涙した。
彼女が操作する小型ドローンのダンゴムシはもはやこの映画のMVPと言ってもいいだろう。リアル寄りの格闘戦がメインのサイコパスでは珍しい、CGのダイナミックなアクションに心が躍った。

もちろん志恩だけではない。相変わらず死亡フラグを立てまくる入江に、クールさ以外の一面を見せてくれる如月、緊迫した戦闘シーンでも緩さを見せて笑わせる廿六木、意外と動ける雛川、いつもの負けん気で立ち向かう霜月。狡噛や宜野座については言わずもがなだ。
イグナトフは、妻を守るためにインスペクターになってしまったりと意外と情に厚すぎる一面がある。今回もそれが強く出るが、だからこそ無茶をする灼のザイルを離さずにいられるのかもしれない。そういう意味で良いバディなのだろう。

灼と梓澤が対峙するラストシーン。このときの灼の台詞を聞いて、「あぁ彼は間違いなくサイコパスの主人公の1人だ」と感じた。この人気シリーズにおいて狡噛と朱に並び立てるキャラクターを作るのは至難であっただろう。けれど彼は免罪体質でありながらも朱と同じ考えを持ち、1人ひとりの人間の意思を尊重していきたいとシビュラに抗う。その姿はまさに主人公にふさわしいものだった。

そして梓澤。サイコパスの2期以降の大きな欠点は槙島を超える悪役を生み出せないことだと思っていたが、梓澤はだからこそ生まれたキャラクターなのかもしれない。
2期の鹿矛囲は明らかに槙島を意識して作られ、それ故に槙島と比べられて否定的に見られた。2期直後の劇場版のデスモンドはインテリではあったがアクションに重きが置かれていた。けれど梓澤は飄々とした知能犯のようで、どうにも人間臭いところがある。助手の小畑とのかけ合いも含めて、槙島のようなカリスマ性はないのに何故か好感を持てた。
そんな彼のキャラクター性がこの映画のラストにも繋がる。槙島とは対局にいるような完璧ではないキャラクターだからこそ、槙島とは全く異なる魅力に溢れていた。
彼のおかげでサイコパスシリーズは新しい一歩を踏み出せたように思う。


この劇場版をそのままTVシリーズで放送していればもっと評価は上がっていただろう。TVシリーズは明らかに冗長的であったし、劇場版の内容含め1時間×10話くらいで納めていればと思わざるをえない。
2期直後の劇場版を羨ましがっていた冲方丁にとっては今回はそのリベンジだったのかもしれないが、もう少し視聴者がどう見るかを考えてシリーズ構成してもらいたい。彼のシビュラの描き方は本当に面白いからこそ勿体ないと思ってしまう。
その他にもザルすぎる公安局ビルのセキュリティーなど批判点やツッコミたいところはある。
アクションもI.Gはあくまでリアル路線を貫いているので、新しいドミネーターなど見どころは多いが、昨今のアニメで喜ばれるような派手さはあまりない。作画としてはレベルが高いのに、マニアックな人にしかウケなさそうなのがI.Gの残念なところだ。


それでもやはりサイコパスは面白いと思わせてくれた劇場版だった。
ディストピアものでありながら、サイコパスではシビュラを完全否定はしない。社会にとって無くてはならないものでもあるからだ。完璧な社会も完璧な法も完璧な人間もいない。正解も二者択一ではない。だから人間1人ひとりが正しい選択をしようと努力していかなければならない。それによって社会(シビュラシステム)は少しずつより良いものに変わっていくのだ。

エンドロール後にも物語があるのでご注意を。
これからも続いていくこのシリーズに、改めて期待したい。

詳細評価

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