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ハリエット
2020年6月5日公開

ハリエット

HARRIET

1252020年6月5日公開

pow********

3.0

ほんとに事実なの?

黒人奴隷を扱った映画は数ありますが、奴隷の身から自力で自由黒人となり、19世紀の奴隷解放運動の偉人となったハリエットの活躍をメインとしているので黒人奴隷の悲劇的で残酷な扱いをたくさん見せられ、人間というのはここまでどうしようもないものなのかという落胆と怒りを駆り立てるような作りにはなっていないです。 ただ、この黒人奴隷時代を描く以上、人間のおぞましい部分を描き、観客に人間の歴史の悲劇を訴えかけることは意味が深く重いことなので絶対に必要なはずだと思います。少しはそうしたキツいシーンはありますが割と軽め、あってもサクッと話が進んでしまい映画の印象が軽くなってしまった感がありました。 ハリエットが、農場主の所有物で奴隷として生きた場所のメリーランド州から、奴隷制度が認められていないペンシルベニア州のフィラデルフィアまで逃亡し、その後何度もメリーランドへ戻っては、親類含め数々の奴隷をペンシルベニア州まで引き連れて何度も救出する様は、事実だとは思いますが、あまりにも運が良すぎて、これは事実ではなく創作じゃないかと思ってしまいました。 ハリエットのことはこの映画で初めて知ったくらいで、こんな人がいたのがそもそもすごいことで目からウロコですが、ハリエットの英雄譚に黒人奴隷たちの悲劇がかき消されて物語が少し軽くなってしまったような感じがしてなんかうまく飲み込めなかったところがありました。 黒人奴隷時代はあまりにも辛い環境で生きた黒人奴隷たちの悲劇のドラマトゥルギーが強力なはずなので、そこに運が良すぎて物語がうまく行き過ぎるという別のドラマトゥルギーが働くと厳かな感じは薄くなります。しかもそれが事実となると、映画を余計に軽くすることに拍車をかけた感があり、逆に嘘くさく見えてしまいました。事実を描いているのに軽くて嘘くさくみえるというのは矛盾してますが、映画はそもそも創作なので「事実らしく」というのも創作なのですが。 あの悲劇的な時代の映画なのだから、悲劇をもっとうまく描いてバランスがとれる必要があった気がします。

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