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主人公の条件

  • koukotsunohito さん
  • 2020年10月30日 1時06分
  • 閲覧数 870
  • 役立ち度 28
    • 総合評価
    • ★★★★★

1回目は困惑、2回目でようやく「な~る」と。最低でも2回鑑賞推奨の、噛めば噛むほど旨くなるノーラン印のナニコレ珍百景。

初めて手にしたビデオカメラで撮影した映像を逆再生して「未来からの“逆行”」と称するような中学生の思いつきみたいなアイデアで1本の映画を撮っちゃった愉快なノーランさん。

『インセプション』と『インターステラー』を観ていると、クリストファー・ノーランの「時間」に対する考え方がよくわかるし、「過去は変えられない」という一貫した姿勢もうかがえて、それはこの『テネット』でも踏襲されている。

だから、たとえ未来から過去に戻ってくることができたとしても、一度起こったことは「なかったこと」にしたりやり直すことはできない。さればこそ、「これはタイムトラベルではない」と念を押されるのだ。

「映画を観る」という行為自体が「現在から過去を見る」ということであり、この映画『テネット』で未来から逆行してくる者とは「結末から始まりにむかって逆再生されている映画」のことに他ならない。

そう考えると、難解だと思えたこの映画が映画小僧ノーランが1本の映画を再生したり終わりから逆再生してみたり途中で止めて巻き戻したり、また再生したりを繰り返して遊んでる様子が目に浮かぶ。

その中で翻弄される“名もなき男”はこの映画の観客とともに戸惑いながらも最後に「主人公は俺だ」と宣言する。彼を助けるニールはさしずめ作者ノーランの分身か。

すべてに絶望して世界を巻き添えにして自ら命を絶とうとしている悪役セイターは、“名もなき男”=「主人公」のなれの果ての姿である。

この映画は最終的に、セイターが抱いたような絶望ではなく自己犠牲の精神によって「主人公」を救うニールの英雄的行為を称える。『ダンケルク』でたった1機の戦闘機で敵の陣地に不時着したトム・ハーディを英雄のごとく描いたように。

『インターステラー』の主人公もまたそうかもしれない。

作者の分身であるニールこそが真の「主人公」であり、キャットの幼い息子マックス=ニール、という説が本当ならば、彼は選ばれし者である。

黄昏に生きる 宵に友なし

ノーランが考えるアクション映画の主人公の条件はシンプルだ。

アクション映画における主人公の条件とは、他者を助け彼らのために戦い、孤独に負けず独り去っていく者であること。

それは「映画」の中だけに存在する幻の英雄なのかもしれない。

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