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ハニーボーイ (2019)

HONEY BOY

監督
アルマ・ハレル
  • みたいムービー 60
  • みたログ 118

3.41 / 評価:76件

父さん、あなたは今でも僕の中で生きている

  • dr.hawk さん
  • 2020年8月14日 20時16分
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

2020.8.13 字幕 シネリーブル梅田


2019年のアメリカ映画
俳優のシャイア・ラブーフの幼少期を綴った半自伝的映画
子役とステージパパが抱える苦悩と葛藤
監督はアルマ・ハレル
脚本はシャイア・ラブーフ


物語は2005年、22歳になった俳優のオーティス・ロート(ルーカス・ヘッジ、幼少期:ノア・ジュープ)が描かれて始まる

12歳から一線で活躍するオーティスは現在も売れっ子俳優

冒頭は映画のワンシーンの撮影風景でSF大作のワイヤーアクションのシーンだった

その夜、遊び仲間とはしゃいだ後飲酒事故を起こしてしまったオーティス

アルコールによる過失は今回だけに留まらず遂には更生施設に入ることになった

そこで彼を診るカウンセラーのモレノ(ローラ・サン・ジャコモ)はPTSDの兆候があると告げる

そしてその治療のために「過去の出来事をノートに書き記せ」と言うのである

オーティスは様々なセラピーを経験していく中で自分の過去と向き合っていく

その回想の多くは子役時代、12歳の時の記憶だった


物語は現在のオーティスがPTSDと向き合う中で過去を回想すると言う流れで、言うなればシャイア・ラブーフのセラピー映画の様相を呈している

その本人がPTSDの原因でもある父ジェームズ(シャイア・ラブーフ)を演じると言うこだわりである

ステージパパであるジェームスはオーティスの幼い頃に妻と離婚しており、オーティスには「ビッグブラザー制度」による保護人トム(クリストン・コリンズ・Jr)がいた

ビッグブラザー制度とは1900年代初頭にできた制度で、「リスクを抱えた子どもたち」に対してボランティアが「兄」や「姉」として寄り添う制度である

ジェームズは前科者のシングルファザー

それ故の止むを得ない制度であるが、ジェームズはトムの存在を疎ましく思っていた


物語はジェームズが禁酒会(AA)に参加する中で悪態をつきながらも「自分の心の枷」にふれていくと同時に、オーティス自身も「PTSDの決定的な瞬間」を追っていくと言う流れになっている


冒頭にてタイトルコールまでに「ジェームズのクラウン時代の映像の音声のみ」がバックグラウンドで鳴り続ける

劇中でもオーティスがその映像を見ているシーンが一瞬だけ映るのだがオーティスは現在の堕落した父しか知らない様子で、ジェームズ自体も過去を誇らしげに語ることはなかった

そして禁酒会ではジェームズ自身が父から受けた虐待を息子に課し、そしてその連鎖を正当化しようとする負の連鎖が起こっていく様子を語り始める

それと並行して描かれるオーティスのセラピー

そこでオーティスは父の告白を受け止めた過去を思い出すのである

「過去の俺を責めないでくれ。息子に稼いでもらっている父の気持ちがわかるか?」

それはかつて「僕がボスだ!」と苛立ちを爆破させたオーティスの心の枷へと回答であり、自分が果たせなかった夢との決別の瞬間でもあったのである


セラピーを終えたオーティスは父との思い出の家に向かう

そこでクラウン姿の父のパフォーマンスを見て語り合う

この一連のシーンは亡き父との別離にも思え(劇中で明確に死んだとは描かれないのだが)、12歳時のPTSDを理想と置き換える重要なシーンだったと思う

過去を美化するのではなく、今後の自分のために「負の連鎖を断ち切る」と言う意味合いである

父が死んだのかは定かではないが、そこに彼はいなかったと見る方が自然のように感じた


エンドロールの最後では同じように「クラウンの音声」が流れ、観客を余韻の世界へと連れ出す

この物語はすべての親子関係に悩む人たちへのメッセージとともに自身への贖罪を意味している

シャイア・ラブーフが父を演じることの意味

それは幼き日の理想の父との思い出を赤裸々に綴り、そしてうまくいかない自分との対話のために紡がれていて、それらの集大成としてこの映画があるのだと感じた

心の中で交わした父との約束

カッコよく撮った訳ではないが、そこで父を演じることではじめて、自分が気付けなかった父の想いが昇華していったのではないだろうか


いずれにせよ、劣等感が蝕んだ親のプライドは疚しさの中で苛立ちへと変化していく

自分のダメなところに気づきながらも直すことができない弱さ

それを指摘されることで愛は阻害されていく

でも行動と想いが完全一致しないのが人間である

子どもとして望んだものと親として与えたかったもの

そこに乖離があるからこそ人生は難しいのだなと感じた

これは子役と言う特殊性だけにとどまらない課題ではないだろうか

詳細評価

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