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いつくしみふかき (2019)

監督
大山晃一郎
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4.30 / 評価:43件

あなたは選べる、囚われと解放のどちらでも

  • dr.hawk さん
  • 2020年9月4日 20時24分
  • 閲覧数 198
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

2020.9.3 京都みなみ会館


2020年の日本映画
悪魔と呼ばれた父を持つ青年が過去を受け入れて成長する様を描いたヒューマンドラマ
監督は大山晃一郎
脚本は安本不哉&大山晃一郎


物語は人形劇をモチーフとして、妻・加代子(平栗あゆみ)の出産とその時に夫・広志(渡辺いっけい)のある行動を並行して描いていく

出産に立ち会わずに妻の実家で盗みを働く広志

彼を呼びに戻った義兄・義孝(小林英樹)によって、その現場を押さえられてしまう広志

義孝を刺して逃げ出しすものの、村人に包囲されて行き場を失い報復を受けてしまう

牧師の源一郎(金田明夫)は瀕死の彼を引き取り、贖罪の道を歩ませようと連れ帰った


それから十数年、息子・進一(遠山雄、幼少期:坂川使音)は無事に育っていたが周囲から「悪魔の子」と蔑まれ阻害され続けていた

ある日、義孝に呼び出された進一は「この村を出て行け」と言われる

だが外に出る気のない進一は「嫌なら叔父さんが出て行けばいいじゃないですか」と答えた


物語は飽和した村の空気が進一を飲み込んで、言いがかりをつけられた末に村を追われるところから動き出す

源一郎の元を頼る羽目になった進一だったがろくに生活もできない

そんな折、無一文になった広志が教会を訪ねるのである

金の無心に来た広志を源一郎は進一と一緒に住ませようと考える

こうして親子と知らずに二人の共同生活は始まるのであった


物語の主題は「赦し」であり、それが何のために必要かを問うていく

「あの時から時間が止まったまま」と評される過去の呪縛

その囚われの意味を理解した時、進一はようやく過去を受け入れて前へ進もうと決意するのである


だがこの物語は執着の終焉が「死」であると言う切なさを含んでいく

死が別つまで交わらなかった親子の愛

だがどのような処遇においても絆を感じていた

それが生きる希望に思えたが、妄想の中でしかそれを叶えることができなかったのである


生きながらえたことによって消えなくなった罪

源一郎は瀕死の広志を救い生きることを選ばせた

そして最低の人生を歩む中できっかけを模索する

その試練は逆効果に思えたが、進一にとっては「怒りの具現化」でもあり、それによって「自立」と言う道を進む

その人生に於いて、理解者である凛(こいけけいこ)と出会い、業を払拭した状態で生家を訪れることができたのである

思えば進一を阻害してきた村は「赦し」にたどり着けないまま時間だけが過ぎ、その囚われのまま朽ちていこうとしていた

村にとって広志は悪魔だが、進一の存在はどうだろうか

悪魔の子と言うレッテルを以って接してきた結果、村全体の時を止めてしまった

赦しとは、罪人のためにあるのではなく、その対極にいる人間が呪縛から逃れるために必要な通過儀礼に過ぎないのである


いずれにせよ、これ以上ない外道だった広志だが悪魔は生まれながらにして悪魔だっただろうか

実際に映画では広志の出自は描かれず、何らかの基点によって変貌したのかすらわからない

だが進一を見ると父の過程が理解できる

源一郎と言う存在がなく、そのまま逃げ場所を失ったまま阻害され続ければどうだろうか

ひょっとしたら、赦しの対極にある感情が悪魔を生み出してはいないだろうか

広志の舎弟・浩二(榎本桜)も愛に飢えたことによって悪魔へと変わっていった

これら人間関係が紡いでいく負の連鎖は増幅を繰り返すもの

その過程を描いた本作はとても有意義な問いかけをしているのではないだろうか

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 悲しい
  • 絶望的
  • 切ない
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