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荒野のコトブキ飛行隊 完全版 (2020)

監督
水島努
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  • みたログ 81

3.53 / 評価:72件

空中戦はチーム戦と戦術を描けない

  • sio***** さん
  • 2020年10月8日 20時14分
  • 閲覧数 332
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

以前、某所で、本作一話目を観た時点でガルパン戦車戦と比較して、
レシプロ機空中戦かつ集団戦での魅力的な戦術描写は難しいのではないか、と論じた。
今回、PCで全話視聴した上で、重低音上映を鑑賞して、再論を試みる。

PC鑑賞時点で、着弾の音響、描写を始め、スタッフが力を込めて作ったことが分かったし、重低音上映以上で見たら、真価を発揮するかも、と感じていた。
これはある程度達成できた、と思う。
発進前の起動準備描写、凧のようなレシプロ機の挙動、クライマックスの市街戦、特に構造物内での戦闘、等、重低音上映ならではの楽しみはあった。
しかし本質的な限界は覆せなかった、と思う。
以下に、ガルパン戦車戦との比較で弱点と考えられる点を整理しておく。

①基本的に1対1のタイマン勝負である。
②戦車というものの多様なデザイン、すなわちキャラクター性を、レシプロ機では表現できず、敵味方の区別すらつき難い。
③スピードが速すぎて、敵味方の動きや位置関係、その意図、有利不利が非常に判り難い。
④ヒキの絵の弱さ。(集団)戦術表現の不在。
⑤ドッグファイトの有利不利が、(大雑把に言えば)「後ろを取る」事でしか描けない。
⑥バトルステージの多様性が無い。

①は、レシプロ空中戦がチーム戦描写に向いていない、最大の理由だ。
戦車には複数人が役割を分けて搭乗し、それぞれの個性と役割を絡める描写ができる。
加えて、ガルパンでは(味方限定だが)様々な個性的チームが、様々な戦車で登場する。
(この辺は②の問題点なのだが)凸凹混成部隊が力を合わせる痛快さ、キャラクター描写は、日常描写では描けても、戦闘シーンに反映できないのが本作の致命的な弱点だと思う。

更に③と④も関わる。
レシプロ空中戦は、パイロット視点で、どうやって相手の後ろを取り、当てるか、にどうしても集中しがちで、タイマン勝負以外の敵味方の動きは意識の外になってしまう。
なので、不意に自身がやられるか、味方の注意で回避するか。その繰り返しになる。
クライマックスの様な集団戦、は常に乱戦しか無く、ヒキの絵では、紙飛行機がヒラヒラ舞っている、としか表現出来ない。

⑤と⑥も大きな制約だ。ドッグファイトについては、「後部銃座」というイレギュラーはあるにしても、原則「後ろを取る」→急減速戦法しか無い。そしてそれはバトルステージの選択肢の無さとも繋がる。

本作でのバトルステージは、通常の空中戦、飛行船の表面及び油田での爆撃(実質は狙撃)、そしてトレンチ攻防戦、の三種。無論、クライマックスの市街戦では様々な構造物を介しての空中機動が描かれるが、それらは全てトレンチ攻防戦の一種であり、同じく何度も登場する、砂漠の渓谷と変わらない。スターウォーズのデススター攻防戦に代表されるアレ、の変種なのだ。(裏返ってデススター攻防戦には、空中戦の魅力が結集していると評せよう)

ちなみに本作シリーズにおいて個人的に特に面白かったのは、爆撃、狙撃の話だった。
視点が爆撃手やスナイパーに特化し、その他が援護する、ミッション遂行型の話だ。
集団での空中戦で、カメラが複数のパイロットを行き来する演出はどうしても散漫になり、何が起きているか、ついて行けなくなるのに対し、比較的構図が単純だからだろう。
正直、人物描写やSF的舞台描写は切り捨てて、ミッション遂行型脚本を並べるべきだったのでは、、、。と思った程。(メインライター否定になってしまうが)

②のレシプロ機のキャラ立ち問題について追記すると、「日本軍縛り」は失敗ではないか?
複葉機とレシプロ機、ジェット機とレシプロ機というハンデ戦の方が、明らかにレシプロ機同士の戦闘より面白かったのだ。
一本調子になりがちなレシプロ同士より、速度に差があるハンデ戦は、急停止で相手を出し抜く頭脳戦の味がある。
この点で、リアリズムと趣味性で日本軍縛りを基準とした設定は誤りで、ファンタジー寄りに、多彩な機種を登場させるべきだった。

余談ながら、ここまで空中戦の特徴を纏めての気づき。
「停止可能であること」は、戦闘表現において大きなアドバンテージだ。
この点で、マクロス以降の「ロボット決闘+空中戦の一般化」が大発明だった事が分かる。
勿論ガンダムの「ロボット集団戦」という、ロボットの決闘レベルからの大革新あってのものだが、スピードの緩急、戦術状況説明の挿入という点で、「空中戦の革新」だった。

しかしそれでも、「戦術状況説明」の点で、戦車戦には圧倒的な優位性があり、
それはスピードの遅さによって「ミーティングが戦闘中に行われ」「解説者が同乗して状況説明する」点にある、と思われる。
そこに破天荒なファンタジーで、乗員と戦車双方にキャラクター性を強く付与した、ガルパンの特異性に、改めて感嘆した次第である。

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