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ドロステのはてで僕ら (2020)

監督
山口淳太
  • みたいムービー 51
  • みたログ 143

3.94 / 評価:100件

映像体験としては至高、物語派は物足りない

  • dr.hawk さん
  • 2020年8月17日 19時24分
  • 閲覧数 605
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

2020.8.17 京都みなみ会館


2020年の日本映画
劇団『ヨーロッパ企画』の短編『ハウリング』の長編リブート作品
自宅のモニターとカフェのモニターが「2分差」で繋がってしまった時空間コメディ
監督は山口淳太
脚本は上田誠


物語は京都の二条駅前にあるカフェのマスター・カトウ(土佐和成)が描かれて始まる

店じまいの時間になったカトウは店員のアヤ(藤谷理子)に閉店を任せて二階にある自分の部屋に向かった

ライブを控えたカトウはギターの練習をしようとするもののピックが見つからない

部屋を探し回っていると突然モニターから声がして焦る

そこ映っていたのは「2分後の自分」でカフェのモニターと繋がっていると言う

現在のカトウが慌ててカフェに行くと「2分前のカトウ」がそこにいた

カトウはそこで「2分後のカトウ」と交わした会話を再現することになるのである


物語はカフェに来店したコミヤ(石田剛太)がこの奇妙な現象を面白がってオザワ(酒井善史)、タナベ(諏訪雅)を呼び寄せるところから動き出す

何度かの再現の後、オザワは「1階のモニターと2階のモニターを向かい合わせたらもっと先の未来がわかるかもしれない」と言い出す

カトウは乗り気でないもののヒートアップしたコミヤらは2階のモニターをカフェの前に置き、ドロステ効果のように幾層にもモニターが映るように仕向けたのである


ドロステ効果とはオランダのドロステココアのパッケージが由来の視覚効果で、劇中にも説明用として登場する

2枚の鏡で作ったり、今回のようにモニターを合わせる方法をビデオフィードバックと言ったりもする


このワンアイデアから生み出された映像はどうやって撮ってるんだろうと驚きが一杯だった

だが結末に向けて物語が進むにつれて物足りなさを感じてしまった


以下、ネタバレになるのでまだ見ていない人はストップしてください


物語は未来から教えてもらった「ヤクザの金」に手をつけちゃったところから緊迫のラストに向かうのだが、まず未来の彼らがあのタイミングでどうして二条駅でビデオデッキを見つけたのかが説明されない

未来側のモニターを見て、それを知った現在軸のメンバーが駅まで行って拾ってくるのだが、これよりはガチャをしに行ったメンバーが「変なもの落ちてた」と拾ってくる方が辻褄があうのではないだろうか


また最優的に「薬を飲まない」と言う選択で未来を変えるのだが、ヤクザに拉致された過去をメグミが残したいと言う理由が意味不明である

この一連の騒動を忘れられる薬なので、怖い思い出をメグミが残したい理由がなく、むしろカトウが英雄譚を覚えておきたいと思う方が自然である

恋愛感情はカトウ→メグミと言う関係性なので、メグミを救った自分を彼女の記憶に留めておきたいのはカトウであり、その方が自然だっただろう

もっともそれによって時空警察が消える展開は不要で、彼らが時空警察のことを覚えていることが彼らの存在を消すとは思えず、「消えたと思ったら別の奴が来た」で良かったのではないだろうか

それで銃で撃たれて強制終了する未来が見えて、そこから一悶着ある方が良かった

その流れの中でカトウの過去を消したくない理由を提示して、不本意ながらもメグミに気持ちが伝わってしまうと言う流れの方が物語としての深みはあったと感じた

もっとも作る苦労は完全無視で好き勝手書いているのでご容赦ください


ワンアイデアSFとして「未来に囚われてしまう自分がいる」と言うテーマが登場する本作は、その起点としてのテーマ性をそのまま放置してしまったように思えた

ミステリーとして「カトウが未来を知りたがらない理由」を冒頭で掘り下げなかったために、後半のメグミとの会話で暴露されるオチが弱く感じるし、そこからもう一つ展開があって(別の時空警察が来る)、「積み重ねられた過去を大切にしたい」とカトウが時空警察を論破するのが望ましい

それによって、カトウとメグミが時空警察の存在を知ったままでも未来人は消滅しないと言うエンディングに辿り着けたのではないだろうか


いずれにせよ、アイデアが魅力的でも作品として心に残るかは主人公の魅力やテーマ性、メッセージ性に依るところが大きい

アイデアと技術だけが突出しても「すごい映画を見たね」で済んでしまうのは実に勿体ないと感じた

過去と未来を見て、現在軸の彼らがどう変化するのか

それこそがこの映画を作る上での哲学だったと感じるのは私だけだろうか?

詳細評価

物語
配役
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音楽

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