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グランド・ジャーニー (2019)

DONNE MOI DES AILES/SPREAD YOUR WINGS

監督
ニコラ・ヴァニエ
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4.45 / 評価:94件

実験の成功を見届けることこそが成長の印

  • dr.hawk さん
  • 2020年8月2日 16時42分
  • 閲覧数 496
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

2020.8.1 字幕 梅田ブルク7


2019年のフランス&ノルウェーの合作映画
実在の気象学者クリスチャン・ムレクが2000年に成功させたプロジェクトをベースに作られたヒューマンドラマ
原題は『Donne-moi des ailes』、英題は『Spread your wing』、意訳すると「翼をください」
監督はニコラ・ヴェリエ
脚本はマチュー・プティ&クリスチャン・ムレク
脚色はニコラ・ヴェリエ&リル・フォッリ


物語は主人公トマ(ルイ・バスケス)が母パオラ(メラニー・ドゥーテ)の仕事の都合で離れて暮らす父クリスチャン(ジャン=ポール・ルーヴ)の元に連れてこられるところから始まる

パオラの恋人ジュリアン(グレゴリ・パケット)と暮らし始めて3ヶ月

トマはオンラインゲームに傾倒し、それ以外には興味を持てなかった

連れてこられたカマルグでは湿地帯に工業団地を作ることで揉めていて、田舎のため通信環境も最悪だった

父は絶滅危惧種のカリガネガンを野性に返すプロジェクトを立ち上げていて、ノルウェーのラップランドから超小型飛行機ULMにて雁と一緒に飛行することを計画している

だが許可を得られないクリスチャンはこっそりと公印を横領して許可証を偽造、研究仲間のビョルン(フレッド・ソレル)に偽造を伏せたまま計画を実行に移していく

カマルグでやることのなくなったトマは父の書斎から「ニルスのふしぎな旅(セルマ・ラーゲルルーフ)」を借りて読み始め、カリガネガンの孵化や調教の手伝いをしていくのである

そんな中、一羽だけカオジロガンが混じっていたことが発覚、クリスチャンはその一羽を計画から外そうとするが、トマは彼に「アッカ」という名前をつけて寵愛し始めてしまう

雁たちはトマを親と認識して慣れていき、そして出発の日を迎えることになったのである


物語はクリスチャン・ムレクの著書「Mit den wilden Gänsen fliegen(野性のガチョウと一緒に飛ぶ、2001年)」を元に、2000年に成功した超小型飛行機よる野鳥の調教を描いている

大きな脚色がなされていて、調べてわかった範囲では「妻パオラが飛行に関わっていたのを息子に変更した」というあたりだろうか

それによって、「ニルスのふしぎな旅」を体現するトマの存在によって、ムレク家があるべき姿に戻っていく様子が描かれていく

象徴的なシーンはトマが飛行に向かったあと、パオラがジュリアンの協力を拒絶するシーンである

そこでパオラは明確に「家族の問題」とジュリアンを拒む

それによって「息子LOVE」状態のパオラを見限るジュリアンが家を去るシーンが挿入され、不倫(あるいは離婚)状態の一家が復活を遂げるように描かれていく


この映画に登場するトマが実在の人物なのかはわからないが、トマの年齢設定がニルスと同じ14歳であり、またカオジロガンに名付けられた「アッカ」が物語上の雁の隊長の名前であるあたりを加味するとフィクションの可能性は高い

「ニルスのふしぎな旅」は小さくなった主人公ニルスがガチョウや雁とスウェーデンのヴェンメイベイからノルウェーのラップランドへと旅する物語である

最終的にはスコーネに到着し、処分されそうなガチョウを「殺さないで」と叫ぶところで夢から醒めるという内容

隊長であるアッカを落ちこぼれへの寵愛に変え、そして彼を特別扱いするトマはおそらくは周囲と馴染めないタイプだったのかもしれない

そんなトマが命の誕生に立ち会い、そして彼らの成長とともに命に対する責任を持ち、そして大人へと成長していく

当初は反対派だったパオラが旅の終わりまで手助けをするように変化し、逆に親としての自覚を持って反対派になるクリスチャンとの対比はかなりの脚色であるが、映画の主題を伝えるための効果としては良策であったと感じた


この映画の特徴は「どうやって撮ったんだろうか」と思える「雁との飛行シーン」と「壮大な自然のシーン」、そしてベタではあるが「台風の目から抜け出して雲の上に出るシーン」である

正直なところ、この映像美だけで映画館で鑑賞する価値がある

機会が許すのならば、大きなスクリーンで堪能してほしいものである


いずれにせよ、約3500Kmにも及ぶ壮大な旅の末に、「行っただけでは成功とは言えない」と冷静にプロジェクトを評価する館長メナール(フィリップ・マニヤン)の言葉は秀逸である

当初の目的は雁を渡鳥として自然に還すことであり、冒険はその旅の一部でしかないのである

映画はラップランドにてアッカたちを待つシーンがきっちりと描かれ、単なる親子の物語になっていないところに好感を感じる

到着と実験の成功

それらの二つの結末をきっちりと描くことによって、本来のプロジェクトの難しさにも言及しているところを注目してほしい

それらを踏まえた上で「過程と結果」を受け入れることで、トマが本当の意味で大人になっていくのを見てほしいのである

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 勇敢
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