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みをつくし料理帖 (2020)

監督
角川春樹
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3.74 / 評価:433件

松本穂香主演・角川春樹監督の大作時代劇

今回取り上げるのは昨年10月に公開された東映映画『みをつくし料理帖』。監督は出版・映画界の風雲児・角川春樹で、彼の監督作品のレビューを書き込むのは初めてだが「天と地と」をテレビで観た事がある。監督は今年で79歳になり、70年代後半から80年代にかけて角川映画の洗礼を受けた身としては、年月の経過を感じずにはいられない。
本作の私的評価を★5つとしたのは、久し振りに観る大作時代劇である上に、奇をてらわない素直な作りであるという事だ。興行的には苦戦したそうだが、こういう映画がもっと沢山作られて、興行的に成功を収める日本映画界であって欲しい。主人公の澪を演じる松本穂香は、大作の主演というプレッシャーもあったに違いないがよく頑張っていた。

松本に次いで出番が多いのは、澪が勤務する料理屋・つる家の主人・種市を演じる石坂浩二だ。特別出演の扱いで、本作のメインキャラでは最も年長者だが途中で亡くなるわけではなく、最初から最後まで出番の多い役であった。石坂といえば角川映画の第1作「犬神家の一族」の金田一耕助役である。本作は他にも角川映画を彩った俳優が多く出演するオールスター映画である。
他の出演者では、角川映画の発掘した最大のスターである薬師丸ひろ子、「天と地と」「天河伝説殺人事件」の榎木孝明、「スローなブギにしてくれ」の浅野温子などが目立っている。「メインテーマ」で薬師丸と共演した野村宏伸、薬師丸・原田知世と並んで「角川3人娘」と言われた渡辺典子がつる家の常連客として出演していたのが嬉しかった。

澪の相手役に当たる男は3人いて、御前奉行の小松原を演じる窪塚洋介が最も目立っている。窪塚をこうした正統派のヒーロー役で見るのは久しぶりだ。見合いの席をすっぽかして澪の顔を見に来るくらいだから、彼女に惚れているのは明らかだ。江戸時代において身分の高い武士が、違う身分の女性との恋愛を成就するケースがあったのかどうか、興味がある。
次に来るのは頼れる先輩ポジションの町医者・永田源斉(小関裕太)で、演じる小関は今年26歳になる爽やかイケメンだ。そしてもう一人のヒロイン・あさひ太夫(奈緒)に尽くす又次(中村獅童)。自らを忘八(仁義礼智忠信孝悌の八つの徳を忘れた者)と称する陰のある男で、ラストでは澪のために一肌脱いでくれる。こういうダークヒーローも時代劇に欠かせない存在だ。

実在の人物は「南総里見八犬伝」を書いた戯作者・滝沢清右衛門(藤井隆)で、辛口評論家タイプであると共に本作のお笑い担当でもある。滝沢馬琴の名前で有名で、この人が出た映画では名作「駆込み女と駆出し男」を観た事がある。「駆込み女・・・」で滝沢を演じたのは山崎努で、この映画では藤井なので時代が「駆込み女・・・」よりも前である事が分かる。
「里見八犬伝」についてだが、千葉県の岩井海岸の近くにある富山(とみさん)という山に登った時、八犬伝の登場人物である伏姫が籠ったという洞窟が観光名所になっていて、立派な案内板が立っていた。八犬伝というフィクションの物語が実際の観光地になっている。歴史的事実がどうかとか関係なく、八犬伝が南房総の血となり肉となっているのを実感した。

物語の着地点は、江戸の料理屋番付(現在のミシュランガイドみたいなものか)の大関である「登龍楼」との料理対決になるのかと思いきやそうではなかった。登龍楼はつる家に対して出汁の味を盗むばかりかチンピラを差し向けて営業妨害し、果ては放火して店を全焼させる。しかし澪は立ち直り、つる家は同じ場所で再起を果たす。この時点で登龍楼の敗北は明らかだ。
大作らしい見せ場としては、吉原で花魁たちが狐のお面をかぶって練り歩くお祭りの場面があり、この日ばかりは女性も見物できるという。狐面の人々が踊りながら行進する場面と言えば、黒澤明監督「夢」の一エピソードを思い出す。狐の一人が行列から外れて澪の元に駆け寄ってくるラストは、この世と異世界が繋がったような感動的なシーンであった。

最後に料理についてだが、上方と江戸の味覚の違いが大きなテーマとなっている。最近見たNHKの「突撃!カネオくん」の醤油特集でも、江戸には力仕事の職人が多く集まったので濃い味が好まれたと説明され、本作でも町医者の永田によって同じ説明がされた。僕は小さい頃に初めて京都に旅行した時、醤油がとても薄い色をしていて驚いた経験がある。
料理の中で印象に残るものと言えばやはり「茶碗蒸し」だ。僕自身、白身をこし取った卵に出汁、具材を混ぜてオーブントースターで35分間蒸し焼きにして茶碗蒸しを作った事があるので、澪が作る茶碗蒸しがどんな味がするのか興味がある。ガスや電気のない江戸時代の人が料理を作るのは、現代の僕たちが想像できないような苦労があったに違いない。

詳細評価

物語
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