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男の敵

男の敵

THE INFORMER

92

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5.0

密告してはいけない理由

1935年。ジョン・フォード監督。あまりの貧しさから賞金がかかった友人を警察に密告する男の苦悩を描いた映画。いいやつなのだが物事を深く考えることができない男が、知らずに犯してしまった「無邪気な犯罪」は罪になるのかということが問われています。しかもイギリス統治下のアイルランド独立運動が背景にあり、密告は単なる友人への裏切りではなく、独立運動がどうなるのかという政治的な重大事にからんでいる。その複雑な事情を簡潔に描く手腕がすばらしい。 だから映像は極めてシンプル。裏切ってしまう友人同士だけが向き合って対面に座り、お互いに切り替えしでカットされるのに対して、恋人も組織のボスも腰ぎんちゃくのようにくっついてくる男も、主人公と対等な関係にないので、位置は上下にずれており、切り替えしでカットされることがない。密告していはいけない理由が、その友人だけが唯一の友人だったからだということが、抽象的な「友情」や「独立の大義」という概念ではなく、映像からわかる。すばらしい。 さらにセリフも繰り返しがおおい。主人公が次第に酔っぱらっていくこともあるのですが、「ああ、忘れてた」「うるさい、だまれ」などの繰り返されるセリフは人間関係を簡潔に表現してします。反復と差異。

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