女性目線で見えた社会の隔たり...
- yys***** さん
- 2020年10月19日 7時55分
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本作は、2016年に韓国の作家チョ・ナムジュのベストセラー小説を実写映画化した作品。原作は未読だが、日本を含む数多くの国で翻訳されたもので女性の共感を多く得られた作品である。監督は長編デビュー作となるキム・ドヨン。主演は「新感染―ファイナル・エクスプレス」等のチョン・ユミ。夫役に同作で彼女と共演していたコン・ユ。本作は一言で表すと「女性目線で見えた社会の隔たり...」といった作品。
物語は、平凡な主婦に起こった精神の病から、彼女の人生を通して現在社会で女性達が担う重圧と生きづらさを描いた物語。ジヨン(チョン・ユミ)は、夫のデヒョン(コン・ユ)、そして娘と平凡暮らす主婦。大学を卒業して広告代理店で勤務していたが、前年の娘の出産に伴い退職して専業主婦をしている。ある日、夫の実家で家族団らんの時を過ごしていると家事を手伝っていたジヨンはストレスのあまり一時的に“別人格”となる。そこでジヨンの病気に気づき始めたデヒョンは、彼女のために精神科医への治療を奨めるが、自覚がないジヨンは治療費が高額であることも知り土壇場で帰ってしまう。なぜジヨンは精神を蝕まれていったのか、子供の頃から学生時代、就職、結婚、出産に至るまで人生の中で彼女が受けてきた苦しみの半生を回顧していく...といった物語。
本作を見て、優しい夫に支えられていた主人公がなぜ精神を病んでいったのか、序盤はなかなか分かりづらかった演出ではあったが、所々で回想される女性差別に社会での彼女が受けた精神的な苦しみが原因なのだと気づかされる。映像や演出では大きな展開はなく、回想シーンを交えて淡々と進んで行くのだが、主人公が精神を病んでいく姿は心に迫るものがあった。また、主人公の実母役はとても良かったと思う。彼女の人生のほうが選択肢は少ない時代だったと思うし、無頓着な夫に対して声を荒げた姿は鬼気迫るもので同情してしまった。
また本作は、男の私から観て勉強になった作品である。近年ではどこの国でも、女性の活躍する社会作りが強くなってきているが、もともとの社会が女性の生きづらい、出世し辛い社会であるのが事実。家庭を持つと仕事が続けづらいことは未だに変わらないのは私から見ても感じている。本作は、そう言う意味では廻りの女性同僚への今後の付き合い方として勉強になった作品と言えるだろう。
本作は、周りで鑑賞していた人が女性ばかりだったので女性にはお勧めのできる作品だし、男性には勉強になる作品のように思う。
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