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グッド・ワイフ
2020年7月10日公開

グッド・ワイフ

LAS NINAS BIEN/THE GOOD GIRLS

1002020年7月10日公開

Dr.Hawk

2.0

ネタバレ朽ちていく黒い蛾の如く

2020.7.16 字幕 京都シネマ 2018年のメキシコ映画 1980年代の経済危機の中で行われたセレブ妻たちのマウント合戦 原題は『Lasniñasbien』 原作はグアダールぺロ・アエザ著作『Las Ninas Bien(1985年)』 監督はアレハンドラ・マルケス・アベラ 脚本はガブリエル・メア 物語は1982年のメキシコシティの高級住宅街ラスロマスを舞台に紡がれる 主人公ソフィア(イルセ・サラス)は誰もが羨むセレブ妻 夫フェルナンド(フラビオ・メディオ)の仕事も順調でブランド品を買い漁り、セレブママ友たちとクラブを立ち上げて贅の限りを尽くしていた 時は1982年、メキシコ債務危機が襲った時期で、石油価格高騰を受けて石油投資ブームが起こったあたりである メキシコとアメリカ賃金差によって工場移転の投資も増えていた頃 1980年代に入ってアメリカの金利が上昇、それに伴って対外債務の利払いが増大し追加融資が必要になる 劇中の大統領の演説は「1982年8月の利払い一時停止(モラトリアム)の宣言」であり、以降メキシコはインフレと失業の増大に見舞われた これらの歴史を背景に、この危機下に於いてもセレブ妻たちはマウント合戦のために浪費を繰り返していく 特にソフィアは新鋭のアナ・パウラ(パウリーナ・ガイダン)に対抗意識を燃やし、友人のアレハンドラ(カサンドラ・シアンゲロッティ)らとともに「クラブ内カースト」に躍起になる だがフェルナンドの失墜(社長を任された後に危機が来て破綻した)によって、カードも小切手も切れない暮らしになる そんな噂は一気に広まり、クラブは解散、セレブ妻たちはアナ・パウラにすり寄っていくのである 劇中のプール脇の会話のシーンにて「食事は済ませたから平らげて」とアナ・パウラが言うのだが、それに対してソフィアは「ここではそんな言葉を使うのはやめて」と嘆く 彼女らにとっては「いつでも手に入るもの」として、節制など眼中にないのだが「成り上がりと称されるアナ・パウラ」にとっては不要な贅は敵なのである この辺りの意識の違いが「自分で成り上がった人」と「成り上がった人を捕まえた人」との差であろうか そしてラストシーンではソフィアはお姫様をやめて、偶然来店した大統領に対して罵声を浴びせる このシーンにて、ソフィアの知らない面を見るフェルナンドの顔は最高だった 「誰でもお姫様になりたいの」と言ったアナ・パウラ フェルナンドとの出会いに本当の自分がなかった瞬間でもあるだろうし、またアナ・パウラの夫との関係性も微妙である おそらくこの後フェルナンドは捨てられ、ソフィアは狡猾な一面を覗かせてアナ・パウラの夫に狙いを定めるのかもしれない 冒頭にて「部屋の中で蛾を殺すと不吉なことが起こる」と言う語りが入り、誕生日パーティのフレームに蛾が映り込むエピソードがある その後、ソフィアがいつまでも張り付いている蛾をなんとかしようとするのだが、すでに蛾は張り付いたまま息絶えていた 裕福(フェルナンド)に執着する意味をサラッと描いていて、これが起点となってソフィアの残忍性が顕著になってきたように思う それでも外面だけはそのまま過ごすのだから、女って恐ろしいなあと感じた いずれにせよ、メキシコの経済危機がどんなものかを知っておいた方が映画を理解できると感じた またセレブ妻たちの意識として「葬式は着る服が困る」と言う言葉にあるように、他者への寛容などと言うものは持ち合わせていない いかにして自分をよく見せるのか 思えば旦那すらも彼女たちの装飾品なのである 男性側も煌びやかな蝶を愛でるのと同じように、女性もまたそのような意識で男を選んでいた時代なのかもしれません

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