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河童の女 (2020)

監督
辻野正樹
  • みたいムービー 11
  • みたログ 10

3.56 / 評価:9件

物語転調後のコミカル要素は逃げに思える

  • dr.hawk さん
  • 2020年7月28日 0時57分
  • 閲覧数 409
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

2020.7.27 イオンシネマ京都桂川


2020年の日本映画
ENBUゼミナール「シネマプロジェクト」第9弾作品
自然豊かな民宿のもとに東京から訳あり女が舞い込む物語
監督&脚本は辻野正樹


物語は民宿「川波」の日常が描かれて始まる

その民宿を切り盛りするのは社長・廉夫(近藤芳正)の次男・浩二(青野竜平)で、従業員の屋島景子(瑚海みどり)とともに何とかやりくりをしていた

ある日、父がいきなり「駆け落ちをする」と言い出し、美佐子(飛幡つばさ)とともに民宿から去ってしまう

そのショックにて景子も民宿を辞めてしまい、浩二はひとりで切り盛りをすることになった


そんな時、民宿から見える川で浩二は誰かが溺れているのを見つける

慌てて川に行って助けると、その女は探し物をしていたという

女は梅原美穂(郷田明希)と名乗り、東京からこの町にたどり着いた

人手が欲しかった浩二と住む場所を探していた美穂

素性もよくわからないまま、美穂は民宿の従業員として働くこととなった


物語は美穂の素性と浩二の過去が明かされる背景で、町おこしをしようとする人々、河童伝説を聞きつけてやってきたYouTuber達が絡んでくる

そうして飽和した感情が解き放たれる時、浩二と美穂はある行動に出ることになる


物語の主題は「囚われからの解放」である

その主題が観客に提示されるのは父の駆け落ちである

だがそこで誰もが「立場や現場を放棄することの卑しさ」を感じるだろう

それを最も感じているのが浩二であり、放蕩する兄・新一(斎藤隆)への感情も相まって「すべてを押し付けられた」感を醸し出す

しかしながら、河原で過去の失意を語る浩二は「ここに留まる理由」を明かす

そこで語られる浩二の後悔、だがそれは美穂から見ても思い込みにしか過ぎない自己完結的な鎖であった


この物語では「自らの思い込みによって自分を縛る人物」が「共感性を持った中」で「自分の鎖の無意味さを知る」という流れになっている

この重い物語をポップに見せているのが河童の存在なのだが、正直なところ「この要素が必要だったのかは謎」である

ミスリード的には美穂は実は河童だったとか、河童の逸話が物語に絡んで思い込みが実は創作だったとか、そういう方向に向かうのかと思ったがそんなことはなかった

前半のポップさは物語の入りとしては良いのだが、物語の雰囲気が転調してからのポップ要素は空気を壊していると感じた

夫を殺した妻、幼なじみを見殺しにした子供

この重い事実が二人を閉じ込める枷として「思い込み」に昇華して囚われを生む

その解放にふさわしいのは「過去との決別」である

それは他者の関わりが動かすのではなく、他者との関わりの中で自身が気づく解き放つ物である


いずれにせよ、解放は逃走という形で為され、二人の本質を知ることのない他者が彼らを守るという流れになっている

この解放が真の解放と感じるかは人それぞれであるが、結局のところ「自身の思い込みを克服した」とは言い難い

彼らの思い込みが真実であるかどうかは重要ではないが、「駆け落ち」エンドでは物語のテーマ性は希薄になったと言えるのではないだろうか

物語のサプライズとして、父とは違う思想を持って同じ行動をするという帰結が欲しかった

そこに「河童」の必然性を絡められれば良かったのだが、トリックスター的な要素で使われただけだったのは残念だった

河童は「間引きされた子供」という逸話もあり、それを物語に絡めるならば「美穂が殺したのは自分の子供」であれば、浩二の幼少期のエピソードと絡められたと思う

助けられなかった少年と殺めた母親

美穂も浩二もそれぞれが自身の価値観を補完しながらも、最終的には自身の相手への感情が自分の枷にならなければならない

物語を語る上でこの映画独特の特殊性を考えるのであればそこまで踏み込んで欲しかったと感じた

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • コミカル
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