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存在自体の危うさが不思議で切ない
- wxj***** さん
- 2020年9月22日 21時55分
- 閲覧数 704
- 役立ち度 5
- 総合評価
トランぺッターである男マックスは、愛用のトランペットを売りに楽器店を訪れる。
名残惜しく、最後に1曲と演奏すると、店主が同じ曲をピアノで演奏したレコードをかける。
曲名と演奏者を聞かれたマックスは、「1900(ナインティーン・ハンドレット)」と呼ばれた男の物語を語りだす。
物語は、マックスが語り部となり、過去を回想する形で展開。
現在のマックスの状況と過去の思い出が、交互に交錯していく。
1900年、大西洋を巡る巨大な豪華客船「ヴァージニアン号」。
船の中で、ピアノの上に置き去りにされた生後間もない赤ん坊が見つかる。
彼を拾った黒人機関師のダニーは、自分の名前と箱にあった名前とさらに。
世紀の変わり目を告げる1900年に因んで、「ナインティーン・ハンドレット」と名付けた。
ダニーに可愛がられ、すくすくと成長していく1900だったが、ダニーは事故で死亡。
やがて音楽に目覚め、ピアノを弾き始めるようになり、才能を開花させていく。
マックスが初めて成長した1900に出会った時は、激しい嵐で大揺れの夜だった。
クルクルと回転するピアノを華麗に弾きこなす1900の、神がかり的な技巧がお見事。
必死でピアノにしがみつくマックスとの対比といい、幻想的で目を奪われた。
やがて部屋を飛び出し、ガラスやドアを破壊しても冷静な1900が超人的。
戸籍も無く、公的には存在も無い、ミステリアスな不思議な宿命を背負った男。
身寄りのない孤独な1900が、マックスという生涯の親友を得た瞬間でもあった。
1900はマックスらと共に、船内のダンスホールでバンド演奏して観客を魅了する。
彼の音楽とピアノの腕前は、評判を呼んで人気となり喝采を浴びる。
心地良い音楽の音色が素晴らしく、音楽映画としても楽しめるクオリティ。
アップテンポなナンバーは、ワクワクと心が踊り興奮させるほど。
ある日、ジャズを生んだという名ピアニストが、ピアノ演奏の決闘を申し込んでくる。
このピアノ対決は、実に見応え・・・聴き応え?あって、素晴らしかった。
超絶早技テクニックで、共に見事な演奏を披露するのにゾクゾクした。
初めて聞くジャズに感動しながらも、最後には打ち負かす1900がお見事。
皆に称えられる1900が、眩しくて神々しいほどの勢いだった。
これも、人々の願望の化身なんだろうか、と思うほど常人離れしてる。
ティム・ロスがカッコ良くて、演奏する姿も違和感なくはまってた。
そんな1900の評判を聞き、世間に広めようとレコード会社が録音にやって来る。
演奏していると、窓の外に美しい少女が現れ、彼は一目で心を奪われる。
メラニー・ティエリーが、飾り気のない素の美しさがあり、魅力的。
たちまち夢中になるのも納得の、ピュアで天然な美貌が輝いていた。
1900がコッソリ、夜に寝静まった女性客室に忍び込んで・・・という場面は、驚いたが。
誰にも気付かれないあたり、やはり彼は存在していないのだろうか、と思わせた。
彼女に話しかけようにも勇気が出ず、下船する日がやって来る。
1900は意を決して話しかけたが、レコードを渡す事は出来なかった。
レコードを割って捨てたが、彼女への想いが断ち切れずに苦悩する1900。
そしてついに、人生で初めて船を下りる事を決心する。
陸での普通の生活を勧めていたマックスは、彼の決断を喜ぶ。
1900の音楽の才能を、世に知らしめるチャンスでもあるし、世界も広がる。
仲間たちに別れを告げ、いざタラップをゆっくりと降りていく1900だったが。
途中で立ち止まり、無言のまままた船に戻ってきてしまった。
この時、彼の心の中に飛来していた感情が何だったのか、最後に明かされる。
1900は、自らに課された宿命と、居場所を悟ったんだと思った。
その後マックスも船を下り、1900だけが船に残り続けた。
時は流れ、ボロボロになったヴァージニアン号を解体するため、ダイナマイトが仕掛けられたと知るマックス。
まだ1900が船にいると確信し、必死で訴えて彼を見つけようと乗り込む。
ついに、1900と再会したマックスは、彼の想いを知る。
終わりの見えない世界と、限りのある鍵盤の世界で見えたもの。
移りゆく時代の影で、彼の抱いた想いが切なくて感動的。
最後まで、彼の存在の危うさが不思議で、幻想的でファンタジック。
船を運命共同体とした彼は、滅びゆく時代の象徴なんだろうか、と。
存在自体がつかめないような、数奇で儚い生涯が奇跡的で切ない。
音楽もたっぷり味わえて、充実の170分、観賞出来て良かったです。
詳細評価
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