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おもかげ
2020年10月23日公開

おもかげ

MADRE/MOTHER

PG121292020年10月23日公開

Kainage_Mondo

4.0

短編のつづきは別仕様で。

掴みは切迫感と絶望感と無力感にあふれた傑作短編。思わず手に汗を握ったところで 10年後 の字幕とともに 物語の幕が開く憎いこしらえだ。 失踪した 6歳 の息子はどうなったのか ? 息子を海岸に連れて行った夫はどうしたのか ? 説明は一切なく、後段、エレナ ( マルタ・ニエト 以下敬称略 ) が離婚した元夫へ激しい怒りをぶちまけるシーンがあるのみだ。10年間、件の海岸ちかくで生活を続ける エレナ に向けられた好奇の目、苦悩と孤独には深く立ち入らず、物語は、6歳 の息子の おもかげ を宿した ジャン ( ジュール・ポリエ ) と偶然出会ったあとはもう ! 一直線の 恋愛劇 に化けてしまう。 ジャン はただ似ているだけ、それだけでどうしようもなく惹かれてしまう エレナ の思いが切ないが、それを契機に彼女に熱を上げてしまう ジャン との関係は、今まで様々な映画で描かれてきた、ミドルティーン ( 和製英語らしい ) の青年と中年女性の甘やかな関係とどこが違うのか ? という突っ込みは措く。巻頭の短編の神通力が、本作に遍く及んでいるのだろうね。 それにしても、息子の おもかげ を宿す美少年を抱くことで、映画の惹句の如く、エレナ が囚われてきた喪失感を払拭し、希望と再生を得ることが出来るのか ? この辺り、今ひとつ腑に落ちなかった。 母心ならいざ知らず、女心は不可思議で、混乱して周囲を振り回す エレナ を誰が責められようか、とは思うが、気の毒だったのは ヨセバ ( アレックス・ブレンデミュール ) だ。甲斐甲斐しく世話を焼き、常識を説き、エレナ の衝動を優しく受け止め続けたのに、あんな仕打ちに遭ってしまうとは。棚ぼた の ラモン ときて、これまた釈然としない着地だった。

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