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上映中

すばらしき世界 (2020)

監督
西川美和
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4.23 / 評価:1747件

綾野剛は時代の変化に役所広司は人間の性分

  • ta7***** さん
  • 2021年2月11日 21時52分
  • 閲覧数 3578
  • 役立ち度 198
    • 総合評価
    • ★★★★★

人間ってのは根本的に懲りないわけで、昔「塀の中の懲りない面々」1987年と言う安部譲二の自伝的小説を映画化した「喜劇」があった。入出所を繰り返す累犯罪者達を描いた作品で、まさに本作の主人公の来し方であり、今度こその際どい不安定な行く末を描き、本当に辛うじて舞い戻る事を回避出来たような?出来なかったような?を描く。その意味で偶然とは言え同テーマ作品が同時期に公開された「ヤクザと家族 The Family」(傑作です)とは似て非なるもの。14年ぶりの綾野剛がぶち当たるのは「時代の変化」に対して、13年ぶりの役所広司が直面するのは「人間の性分」である。その懲りない性分を包み込む「すばらしき世界」を構成する市井の人々を描くのが本作で、素晴らしい傑作に仕上がった。

 よりによって「ヤクザと・・・」で苦悩するヤクザをキレッキレに熱演した北村有起哉がなんと区役所で生活保護としてお役所仕事風情から次第に親身になる職員を大好演!ニコリともしない固い表情のまま自分なりに出来得る事を模索する。テレビ番組の興味本位と報道の境目で逡巡する青年を仲野太賀が好演。局のディレクターである長澤まさみにけしかけられ、八方塞がり打開の妥協策として乗ったもののテレビ局の偽善に気づく成長を見せつける。大浴場で背中を流すシーンのその証がありありと見える。本作の原作の著者が彼なんでしょうね。そしてスーパーの店長である六角精児の温情には胸を打たれました。朝ドラで大正期のけったいな撮影所所長の印象が強く、少々困惑したが、テレビ取材への懐疑を諭すあたりの凄さに魅せられた。さらに行き詰った主人公がとうとう昔の舎弟に連絡を取った瞬間、ゴージャスな夜景と曲が流れる魅惑の演出はお見事ですが、その行先の九州でのキムラ緑子扮する姉さんの「引き留め」はグッと来ましたね。他に橋爪功・梶芽衣子による保護観察夫婦の温情。ラストに現れる薄曇りに見える青空がこの世界を肯定する。

 もちろん要の役所広司の圧巻の演技があってこその青空ですが、彼のような大御所スターが幼稚園よろしく大きく手を振っての歩行ってのも少々痛ましく(役だから当然ですがね)、さらに本編中なんと3度も全裸の後ろ姿を披露ってのも凄いと言わざるを得ない。「朝が来た」の河瀬直美に続き女性監督の一切妥協の無い快進撃が続きます。それにしても西川美和ってこんなに上手かった?ってくらいに素晴らしい構図で大雪の旭川から雑踏の上野まで鮮やかな描写に驚きました。夜中に下の階の騒ぎに業を煮やし文句を言うシーン、若者四人の番騒ぎを嗜めた瞬間、最初は画面に見えなかったのに、むっくりと起き上がった半グレの登場の鮮やかさ、瞬間的に場面が一変するわけで映画的醍醐味ですね。

 ただ、安田成美(なんでいつも同じ髪型が許されるの彼女だけ?)あたりの説明不足、ラストの死因への暗示不足から、介護施設での暴行事件の時系列の中途半端、など消化不良もあるのが惜しい。

 「すばらしき世界」に住む「ろくでもない人々」を生んでしまう「ろくでもない世界」を描きたかったのかもしれない。

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