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上映中

アジアの天使 (2021)

監督
石井裕也
  • みたいムービー 73
  • みたログ 133

3.28 / 評価:110件

ビールと愛そして共感、これぞ相互理解の鍵

映画というものは、ドキュメンタリーフィルムでない限り、良くも悪くも夢を描くファンタジーであって欲しいと私は思います。どんなに悲惨な現実や最悪な状況を描こうとも、最後には希望が持てるようなエンディングであって欲しい。例えば、寅さんが、どんなに手痛く振られてもラストは日本晴れの下で元気に啖呵売をするシーンで終わったようにね。
 さてこの作品、冒頭のシーンがどこに繋がるのか最初は判りません。次に、韓国語がまったく話せない池松壮亮演じる剛が、韓国で成功しているらしい兄を訪ねてくるシーンに移るわけですが、子供を連れているのに、なぜ妻がいないのかも判りません。一方、ショッピングモールで誰も聞いていない中、歌を歌っているチェ・ヒソ演じるソルの三兄弟も描かれますが、何か悲しみを抱いているようですが、詳細はわかりません。
 そんな日本と韓国の兄弟たちが、ひょんなことから一緒に旅をするロードムービー。どこまでも適当なオダギリジョー演じる兄と、子供を抱えた剛という日本の家族。一方、家族のために自分を犠牲にしているソルと、不器用だけど真っ直ぐで優しいその兄、姉を思う妹という韓国の家族。この6人が旅を続ける間に、見ている我々にも事情が判ってきて、反駁していた彼ら自身も相互理解を深めていくというお話でありました。
 国交正常化後、最悪と言われる日韓関係が背景にあって作成された作品であることは間違いありませんけど、実際の個々の国民の間には、そんな感情はないでしょう。それよりも、言葉は通じない、文化は違う、何を考えているか判らない、という嫌悪感というよりも、違和感の方が強いのではないでしょうか。でも、同じ病気で家族を亡くしたという悲しみと、ヘンなおじさん天使を見たことがあるという共通体験は、そんな諸々の感情をやすやすと乗り越えてしまうというのが、作品の主旨であると思いました。
 パンフレットを読むと、石井裕也監督は、当初日本語で全編シナリオを書き、それを韓国語に翻訳してもらったけれども、見事なほどニュアンスが伝わらなかったそうです。また、韓国の映画制作スタイルは、ハリウッドと同じで、シナリオにディテールをすべて書き込んでおかないとスタッフは動いてくれないとのこと。日本で言う行間を読む、という感覚が通じない。その上、全編韓国ロケですから、制作に当たっての苦労は並大抵なものではなかったでしょう。ここでも相互理解は難しかったんですね。そのもどかしさがそのまま作品にも、いい感じで投影されていたような気がします。
 そんな中、あのコンビニの前でソルと剛が語り合うシーンは印象的でした。片言の韓国語と日本語。そして共通言語は、たどたどしい英語なんだね。だけど、やはりどこか目で語り合えるんだね。そしてここはアジア。天使は欧米文化のものかもしれないけど、アジアの天使は、そんなもんじゃないんだよ。時には噛むしね。
 旅を終えてオダギリジョー演じる兄は、また放浪の旅に出てしまうけど、残された5人は、何か新しい家族が形成されそうな雰囲気出終わるラストシーンは、とても好感がもてるものでした。
 そうそう小さな冊子のパンフレットは読みごたえがありましたよ。八田靖史氏が書いてましたが、韓国にも日本同様、「同じ釜の飯を食う」という慣用句があるそうです。物語の中にも何度となく食事のシーンが出てきました。そしてビールが結構作品の鍵となりますが、私はまったく気がつきませんでしたけど、剛の呑むビールが物語が進むにつれ変わっているとのこと。
 思い起こせば確かにそうで、最初は兄キ愛飲の缶の「Cass Fresh」(これをやたら呑んでいる)、最後はビンの「Cass Fresh」。これによりソル達との関係が新たに築かれたと読み解いておられました。う~ん、なかなか深いぞぉ~。
 ただ一つギモンなのは、この映画のポスターの内の一枚に、池松壮亮に天使の羽根が生えているものがあります。Yahoo!映画の表紙にも使われていますが、あれは何を意味していたのでしょうか?私自身は、パンフレットの表紙に使われた、天使のスノードームと天使の羽根の写真。幼き頃両親に買ってもらったこれが、後のヘンなオジサン天使に繋がるようで好きなんですがねぇ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • ファンタジー
  • 切ない
  • コミカル
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