レビュー一覧に戻る
ボヤンシー 眼差しの向こうに
2020年8月7日公開

ボヤンシー 眼差しの向こうに

BUOYANCY

932020年8月7日公開

j9i********

5.0

修羅の海で少年は修羅の男になる

印象的なポスターに惹かれ鑑賞。 セリフではなく眼差しが多くを語る映画らしい映画であった。 ポスターは海に浮かぶ少年で、その横顔からは眼差しは見えない。 映画をみて初めて少年を知る。 ポスターの構図は正解だと思った。 昔、あるドキュメンタリーを観て以来、フィレオフィッシュバーガーを齧るとき、冷凍食品の白身魚の加工品をを見るとき、その後ろに、闇の向こうでニッカリと不気味な笑みを浮かべるひとりの男の目をみる。 この映画を観た後、つぶらな瞳の子猫が舐める餌のCMを見るたびに、死んだ魚のような目をした男たちの眼を背後に見るであろう。 そうでなければならない。 そうであって欲しいと願い作られた映画であろう。 その中でただ一人、幼さ故に、いまだ諦める術を知らず、物言う強き瞳で私たちを見つめる少年から、私たちは何を訴えられているのか。 猫缶から、スーパーで安い海の加工品を届けているのは誰なのか胸に刻まねばならない。 親の命令で青々とした田畑で一日中こき使われる少年は不満だらけだった。きっとここは地獄だと思ったであろう。 町へ出て稼ぎたいと思う心は責められない。 しかし、無一文の少年がほいほいとブローカーに連れられ行き着いた先は、本当の地獄だった。 船の主人は笑いながら言った。 お前もこれで一人前だ。 少年は何をしたのか。 少年は地獄をみて決断した。 故郷の姿を見て涙する少年は、もう何も知らない子供ではなかった。 父の姿を見、背を向けて歩く少年に私たちは何を思うべきだろう。 そして、実習生などと堂々と国ぐるみで嘘をついて、東南アジアなどから多くの労働者を得ている日本も、この漁船と少年たちと少しも変わりはないことを恥じるべきであろう。 PS 夏はなぜだか、社会勉強に適した作品が多く上映される。これを観たからといってどうなるわけでもないかもしれないが。 こういった映画は、本当は夏休み中の子供たちに観てもらいたい考えてもらいたいところです。

閲覧数704