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タイトル、拒絶
2020年11月13日公開

タイトル、拒絶

R15+982020年11月13日公開

Dr.Hawk

4.0

ネタバレ映画を見て拒絶反応が起こるのは褒め言葉だ

2020.11.16 イオンシネマ京都桂川 2019年の日本映画 劇団「□字ロック」の2013年初演舞台の映画化作品 あるデリヘル店で展開される底辺たちの愛憎劇 監督&脚本は舞台版の監督でもある山田佳奈 物語は上半身下着姿のカノウ(伊藤沙莉)が第四の壁にてスクリーンのこちら側に話しかけるところから紡がれる 「ポン引き禁止」の看板の前で主張を訴えるカノウ そして誰かに追いかけられて逃げていく 場面はそこに至る経緯として、デリヘル店「クレイジーバニー」に面接にきたカノウが描かれる 店長のヤマシタ(般若)は面接で「手コキ、素股OK。本番NG」と告げ、「わかったらあっち行け」とあしらう そこはデリヘル嬢たちの待合部屋で、アツコ(佐津川愛美)、キョウコ(森田想)、カナ(円井わん)らがくっちゃべっていた そして、その奥には1人でノートに何かを書いているチカ(行平あい佳)がいて、この店には熟女のシホ(片岡礼子)や売れっ子のマヒル(恒松祐里)たちがいた アツコは元ナンバー1でヤマシタに可愛がられていたが、今はマヒルの天下になていて、天真爛漫に常に笑うマヒルが部屋に来ると部屋の空気は一変していく 物語はデリヘル嬢になる面接を受けたカノウが寸前で逃亡し、そのまま見入りがいいからと言う理由で雑用係として店に出入りする様子が描かれていく 運転手のハギオ(田中俊介)や、リョウタ(池田大)らとともに客を回すカノウだったが、嬢が下手をこいた後始末はヤマシタが請け負っていた そして何かある度にヤマシタに恫喝され、罰金を取られてしまうのである この映画の主役はカノウなのだが、どちらかというと映画を進めていく狂言回しのような立ち位置にいる カノウが様々な人生と遭遇する中で自分の人生について考えていくものの最終的に何かを得ると言うことはない 映画をリードしていくのはマヒルであるが、彼女はデリヘル嬢の中では異質の存在だった 彼女だけがデリヘル嬢をやる目的が明確である (みんなお金にために働いているが彼女だけはその使い道に言及していく) 彼女にお金をせびる妹(モトーラ世理奈)との会話でもわかるように、マヒルは「自分の中にゴミを貯めてバランスを取っている」 そのゴミとは「彼女の中に注がれる精子」であり、排泄されるだけの欲望に過ぎない マヒルは時折ホームレスらの写真を撮る この意味が単に自分よりも底辺の人間をフォーカスしていると言うよりは、そう言った行為にすら辿りつかない人間を興味深く見守っているように思えた 最終的にそのカメラに映り込んだ人物が妹を襲うことになるのだが、彼女が狙われる理由はわからない 背格好から若い男のように見え、もしかしたら妹の相手ではないかと感じた マヒルは自分の中で「他人(子供)」を殺す 流れに逆らわない妹は産むことを考えているのだが、そこに相手の意思が介在しているかまでは語られないからである もっともこれは個人的な想像なので、ひょっとしたら「デリヘルの入っているビルから出きた女=お金持ってる」と思って襲っただけかもしれませんが 物語は新人でナンバー1になったリユ(野崎智子)が加入し、店の上下バランスが崩れてくるところから急展開を見せていく 邪魔者になったアツコを追いやって、ヤヨイ(大川原歩)などが加入するものの「ブスかつバカ」のヤヨイの行動で事態は収集のつかない方向へと進んでいく アツコの放火未遂騒ぎの裏でのほほんと何も考えていないヤヨイのエピソードは秀逸で、「そんなに壮絶にいたら、私はどうしたらいいの」と嘆くマヒルの言葉と連動していて、彼女がヤヨイのように能天気になれない悲哀を表現しているようにも思えた いずれにせよ、底辺にいる男女を描いているものの、ある意味において社会の縮図のようにも見えてくる マヒルやハギオから秘密を告白されるカノウは、タヌキを装いながらもタヌキでありたくないと願う女性である だが2人がそれらを話す理由が「そんな関係にならないでしょ(By ハギオ)」と言うように、その人生は「他人から見ても主役(ウサギ)ではない」と言う絶望であった そうして語られる「私の人生にタイトルは必要なんでしょうか?」と言う言葉 それに対してつけられた「拒絶」と言う言葉は「これらのエピソード」において、カノウがこれから生きていく人生観を示しているようにも思えた タヌキである自分を拒絶しても、タヌキであると言う他人を拒絶しても変わらないもの そうした中で自分も他人も拒絶することは難しく、タヌキであることを受け入れるかウサギになるしかない そして彼女はどちらを選ぶのか おそらくは前者として生き、こうしたウサギとタヌキの生態を描いていく作り手のような存在として生きていくのではないだろうか それを言ったら怒られるかもしれませんが

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