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10万分の1
2020年11月27日公開

10万分の1

1122020年11月27日公開

Dr.Hawk

3.0

ネタバレ献身的であることが苦痛になるジレンマ

2020.12.1 イオンシネマ高の原 2020年の日本映画 原作は宮坂香帆原作の同名少女漫画(小学館、Cheese!フラワー、2015年、全9巻) ALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹患した少女と周囲の人々を描いたラブロマンス映画 監督は三木康一郎 脚本は中川千英子 物語は桐谷蓮(白濱亜嵐)のモノローグにて「ヒーローになりたいと同じくらいに子どもじみた恋」という一節が描かれて始まる 蓮は紫上学園に通う高校生で剣道部のホープだった 彼の友人には同じ部活でライバルでもある比名瀬祥(白洲迅)がいて、彼らを支えるマネージャーに比名瀬の彼女でもある橘千紘(優希美青)と彼女の親友の桜木莉乃(平祐奈)がいた ちなみにこの作品は『あかいいと(著:宮坂香帆)』の続編に位置付けられていて、関係性を踏襲している ちなみに前作での主役は比名瀬と千紘の二人である ゆえにこの作品は『あかいいと』のサブキャラクターである蓮と莉乃の物語となっている 蓮のことが好きな莉乃が想いを伝えられないまま時を過ごし、あるきっかけで蓮の想いが爆発し告白に至るという流れ このシークエンスが前半にあり、そして物語は急展開し『あかいいと』とはまったくニュアンスの違うラブロマンスへと変貌していくのである この映画における蓮と莉乃の恋愛の障壁は「ALS」、筋萎縮性側索硬化症と呼ばれる難病で原因も治療法もない病気である いわゆる「難病系恋愛ドラマ」のカテゴリーに入る本作だが、配慮して架空の病気にしたり、無意味に感動ポルノにしたりはしない 難病系恋愛ドラマは原則として「死」に向かう過程において二人はどうするのかを描くのだが、本作では「失っていくものとどう向き合うか」という主題に真っ向から取り組んでいく おそらくはスイーツ系恋愛ドラマで「ALS患者の実態」のようなドキュメンタリーっぽい映像は初めてではないかと感じた 二人が「先輩」として話を聞くことになった高山夫妻のエピソード このシーンだけはこの映画の中で異質に思え、またリアルゆえに莉乃が抱える難題を真正面から描いていく 転倒や失禁などのごまかしの効くような描写ではなく、気道切開しての呼吸器装着や視線入力装置(有名なところだとTobinなど)によるキーボード入力と音声出力など現在進行形の技術が描写されている このシーンはいずれ莉乃が辿る未来であり、彼を支える妻は蓮が辿る未来とリンクする だからこそ彼女は経験則として、「一人で背負おうと思わないで」と言い、「桐谷くんに余裕があることが彼女の幸せにもなる」とアドバイスをするのである このエピソードは実際に看病経験のある人、あるいはされた人ならわかるのだが相手の献身が時には苦痛になってしまうというロジックである 近しい人には見られたくないことも多々あり、こう言った意味合いで看護や介護を外部の人が行う必然性というのは存在する このあたりのリアルをきちんと埋め込んで、それでいてスイーツ系恋愛ドラマから逸脱していないというのはかなり評価できるポイントではないだろうか 愛情があるゆえに陥る苦痛 これは何も病気だけの話ではない 献身が利他的であっても、その行為を受け止めるのは対象者である その対象者の目線にどれだけ立てるか これは普通の人間関係でも同じことであり、だからこそ彼らが「いつも通り」を強調して仲間達と共に歩んでいくことを決めるシークエンスには目頭を熱くさせる何かがあったのだと思う いずれにせよ、LDH系スイーツかつ難病少女漫画として大して期待はしていなかったが、事前期待値を大きく上回ってきたと感じた ただやはり難点は多く、「どうしても高校生に見えないキャスト」や「駆け足すぎる展開」あたりのアラは目立つ それでも原作の年齢層を考えると、ALSをはじめとした難病のリアルを知る機会になると考えれば存在意義は大きいと思う このタイプの映画をガチのドキュメンタリーで作っても若者見ることはないし、そうした難題を抱えている人との接し方というのも学べる そう言った意味においては、メッセージを伝えるためには有意義な手段だったように感じた 一人で守れそうな蓮がそれゆえに守れないもの そこに言及するためには「たとえミスキャストに見えても」必要だったのではないだろうか

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