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犬部!
2021年7月22日公開

犬部!

1142021年7月22日公開

Dr.Hawk

3.0

ネタバレ問題提起としては良作もドラマとしては不足

2021.7.28 イオンシネマ久御山 2021年の日本映画(115分、G) 実在の獣医師・太田快作さんをモデルに書かれた書籍『北里大学獣医学部 犬部!(片山ゆか著)』を原案とする「保護動物と関わる獣医師の奮闘」を描いたヒューマンドラマ 監督は篠原哲雄 脚本は山田あかね 物語は2003年の初夏に十和田獣医大(モデルは北里大学獣医学部)に在籍する大学生・花井颯太(林遣都)の日常が描かれて始まる 大学で獣医学を学び、自宅では保護動物を飼う颯太 ある日、帰宅途上の道端で一匹の野良犬を見つけた 颯太が自宅に連れ帰るものの、その犬は生体実験用の犬で、安室教授(岩松了)のゼミから逃げ出した犬だった 颯太の友人・柴崎涼介(中川大志)は仕方なく教授に連絡して引き取ってもらう 颯太は「外科実習」に反対の立場で、一匹も殺したくないと思っていた だが安室教授は「一殺多生」と言う概念で颯太を諭し、「一匹を殺すことで多くの命を救えるんだ」と説いた 物語は再び実習犬が颯太のところに逃げてきてしまうところから動き出す 再び引き取りの連絡するものの、特例ということで実習犬を譲り受けることになる 動物保護に強い思いを抱く颯太は、「動物の保護活動のためのサークル『犬部』」を立ち上げると宣言する メンバーは親友の柴崎と同じアパートに住む後輩・佐備川よしみ(大原櫻子)、そして教授のゼミの秋田智彦(浅香航大)が参加することになった それから16年後、颯太は東京で動物病院を開き、柴崎は殺処分を無くすために動物愛護センターに就職する よしみはそのまま伝染病学科でFIP(猫伝染性腹膜炎)のワクチン研究に没頭し、秋田は親(秀作、演:酒向芳)の病院で経験を積むことになった 颯太は無償で不妊治療を引き受けたりと看護師の深沢さと子(安藤玉恵)を困らせていたが、保護動物への関わりは犬部時代と変わることはなかった そんな折、大学生の川瀬美香(田辺桃子)が彼の元を訪ねてきた 美香はペットショップの店主・久米尚之(螢雪次朗)の依頼で獣医師を探していた 映画の主題は「保護動物をどうやって無くすか」に奮闘する獣医師の活動を描いていて、現場で保護動物と向き合う颯太、伝染病根絶を目指すよしみ、保護に否定的な父の元で働く秋田が描かれていく そんな中で柴崎が選んだのは「殺処分」を行う保健所管轄の動物愛護センターで、所長にまでなった柴崎は多くの改革と実績を成してきた だが、それでも減らない殺処分に心を痛めて、遂には退職してしまっていたのである 鑑賞前に事前情報を全く入れないタイプなので、ほんわか「サークル恋愛もの」に見えるポスタービジュアルに良い意味で騙されてしまった 結構ガチな内容で、殺処分の過程を見せてくるという現実直視には背筋が凍った それでも物語としての面白さはやや欠けていて、主人公たちと動物の絡みにほんわかするパートと現実を直視する残酷さを交互に見せられるだけで終わってしまっている というのも、主人公の颯太は「最初から最後まで一貫した意思の元で行動して変わらない」ので、ヒューマンドラマとして颯太を中心に置くと変化のない物語になってしまうからである 颯太の生き方に感化される周囲の人々という描き方ではあるものの、その割には柴崎のパートが少なくて浅いので、彼の現場での葛藤であるとか現実と彼自身の内面の変化にもっとフォーカスを当てた方が良かったような印象はある 語り手が門脇光子(田中麗奈)で、主人公が柴崎で保護センターでのドラマを冒頭に持ってきてから、回想録という形で颯太の物語にシフトして行っても良かったかもしれません 颯太の偉業を客観視(観客目線)で伝えるキャラクターというのがこの映画にはいないのと、彼自身の偉業を追うだけではストーリーの軸は弱い この映画において「最も葛藤があって、最も変化した人物」は柴崎であって、実質は彼の物語に近い印象を受けた もし颯太をメインで置くならば、颯太が柴崎から受けた影響について深く掘り下げる必要があるので、その点が弱いのではないだろうか いずれにせよ、犬猫大好きさんたちには「天国と地獄」の落差が激しい映画ではあるものの、気軽に「飼う」というスタンスで命に向き合う層に関しては一定の効果があると思う なので「ホイホイ」っぽいビジュアルは正解だと思うし、大学サークル青春ものと誤解して鑑賞する層も抱き込める感じはした あとは匂わせで終わる恋愛関係がもどかしすぎるので、実際のモデルの方はどうだったとかは置いといて、大学生活のキラキラパート(たぶん玉砕)をねじ込んでも良かったような気はした 「人と動物のどっちが大事なの?」、で「動物!」と答えそうな人々なので、そのようなわかりやすい変態性を軽くぶち込んでも良かったような気はしました

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