ここから本文です

ウルフウォーカー (2020)

WOLFWALKERS

監督
トム・ムーア
ロス・スチュワート
  • みたいムービー 113
  • みたログ 163

4.39 / 評価:122件

解説

アイルランド・キルケニーに中世から伝わる伝説を基に描くアニメーション。眠ると魂が抜け出しオオカミに変身するウルフウォーカーと、ハンターの父を持つ少女の友情を映し出す。アイルランドのアニメーションスタジオであるカートゥーン・サルーンが、『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』に続くケルト3部作の完結編として製作。アカデミー賞長編アニメ賞に2度ノミネートされたトム・ムーアと、『ブレンダンとケルズの秘密』のアートディレクター、ロス・スチュワートが監督を務める。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

中世アイルランドの町キルケニーでは、人々が森に住むウルフウォーカーについてひそかにささやき合っていた。少女ロビンは、オオカミ退治のためイングランドからハンターの父と共に、キルケニーにやって来る。ある日、父の後を追いかけて森に入った彼女は、人間とオオカミが一つの体に共存し、魔力で傷を癒やすヒーラーでもあるウルフウォーカーのメーヴと出会い、仲良くなる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)WolfWalkers 2020
(C)WolfWalkers 2020

「ウルフウォーカー」豊穣なアニメーションで人と自然の共生の理想を謳い上げる

 なんと豊かな映像だろう。キャラクターからはみ出すほどに自由な輪郭線が感情に応じて変化し、森と街の対比的で詩情豊かな色彩、ダイナミックな構図と3Dを駆使した躍動感あるカメラワークと美しい手描きアニメーションの数々にすっかり魅了されてしまった。

 これまで製作した長編映画全てがアカデミー賞にノミネートされている、躍進著しいアイルランドのアニメーションスタジオ、カートゥーン・サルーンは、本作でさらに一段階上に到達した。野生のオオカミが残る中世アイルランドを舞台に、父に憧れハンターを目指す少女と、オオカミと共に生き、自らもオオカミに変身する能力を持った少女が、都市と自然の分断を乗り越え友情を育んでいく。ケルト神話から着想を得た作品で、キリスト教的人間中心主義とは異なる、かつて存在した思想の豊穣さに目を向け、人とオオカミが共に暮らせる、あり得たかもしれない世界に想いを馳せる稀有な作品だ。

 主人公の少女は二重に抑圧された存在だ。狩人は男がなるもので、子どもは街の外に出ることを禁じられている。そんな抑圧的な街はモノトーン調に描かれ、対照的に森は自由を象徴するかのように豊かな色彩が広がる。対比的構図はキャラクターデザインにも表れている。町の人物たちは鋭く鋭角で、ウルフウォーカーのメーヴやその母は、丸みを帯びた包容力を感じさせるデザインになっている。この対比には、既存の人間社会の硬直さが表れている。

 そして、縦横無尽のアニメーションはひとときも観客を飽きさせない。人物の感情に合わせて自由に形状を変化させる輪郭線、ヒトからオオカミへと変身してゆくメタモルフォーゼは、クラシカルなアニメーションの魅力をたっぷり持ち合わせ、3Dを駆使したダイナミックで奥行きあるカメラワークがそれに加わり、懐かしさと新鮮さを併せ持ったマジカルな映像を生み出している。

 自由を求める少女たちを、自由なスタイルのアニメーションで活写し、アニメーションの豊穣さを示した傑作だ。(杉本穂高)

映画.com(外部リンク)

2020年10月22日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ