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チャンシルさんには福が多いね (2019)

LUCKY CHAN-SIL

監督
キム・チョヒ
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3.58 / 評価:50件

あなたに寄り添う「声」に耳を傾けよう

  • dr.hawk さん
  • 2021年4月7日 22時36分
  • 閲覧数 392
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

2021.4.7 字幕 京都みなみ会館


2019年の韓国映画
失職したアラフォーの映画プロデューサーが人生を見つめ直す物語
監督&脚本はキム・チョヒ


物語はチ監督(ソ・ソンウォン)の映画『裏山で生きる』の撮影スタッフが酒盛りをしているところから紡がれる

映画会社のパク代表(チョ・ファジョン)や女優のソフィー(ユン・スンア)らと一緒に盛り上がるプロデューサーのチャンシル(カン・マルグム)

酒の一気飲みでゲームに興じる彼らだったが、突然チ監督が苦しみ出して倒れてしまう

そして、そのまま帰らぬ人となってしまった


職を失ったチャンシルは仕方なく住居を高台に移し、大家さん(ユン・ヨジュン)の部屋を間借りすることになる

そこに彼女を心配するソフィーがやってきて、その縁もあって一時的に彼女の家政婦をすることになった


パク社長からも切られ、「あなたは雑用をしていただけ」とまで言われてしまうチャンシルは自分がして来たことを誰にも説明できずにいた

そんな折、ソフィーのフランス語の家庭教師キム・ヨン(ぺ・ユラム)と出会う

短編映画の監督をしているヨンは、生計を立てるために家庭教師をしたり、ソンナムメディアセンターで講師をしたりしている

意気投合し、良い雰囲気になるものの、年齢から迷いを生じるチャンシル

そんな彼女のもとに、今度はレスリー・チャンを名乗る幽霊(キム・ヨンミン)が現れるのである

どうやら彼の姿はチャンシルにしか見えないようで、いつしか彼はチャンシルのイマジナリーフレンドのような存在になっていったのである


物語のテーマは「幸福論」であるが、「自分のしたいものを見つけること」だけでは幸せになれないことを描いている

好きでやってきた映画の仕事だったが、彼女は彼女を慕う仲間たちと何かを作り上げたかった

人やお金の管理をしていた彼女だったが、仲間とともに作品を作り上げることに喜びを感じていて、「好きなことを仕事にしてきた」のに満たされなかった過去を振り返る

この映画では「不足感」と訳される「渇望」、それを何で埋めてきたのかという命題が描かれ、チャンシルは誰かに頼ることでその問題から目を背けてきたのである


チャンシルを慕う存在として、彼女を肯定するソフィーと趣味のズレがあるヨンが登場するのだが、チャンシルはずっと「自分に居心地の良い世界」を求めてきていた

だから映画の趣味が合わないという理由でヨンを遠ざけてしまうし、でも彼のことで心がいっぱいになって無茶な突進もしたりもする

いわゆる「自分の現在地がわからない」状態であって、それを正してくれるのが幽霊の存在だった

彼は「全てを求めなければ良い関係でいられる」と言い、彼女はこれまでの人生の不足を全てヨンで埋めようとしていた

だがそれは相手の本心と乖離があって、彼女は飢えから耐えきれずにヨンに迫ってしまっている

イマジナリーフレンドは時に自分にとって本当のことを伝えてくれるのに、そこで自分本位に曲解してしまう

それによってチャンシルはさらに深みにハマってしまうのであった


この作品はゆったり流れる人生賛歌的な物語であって、大家さんや幽霊が語ることは説教じみたところがある

人生の先輩と心の声

それらが説教に聞こえているうちは純粋なものの見方ができないステージである

だがそれが教訓になるとき、おそらくは同じ言葉が道を指し示す光になるだろう

そのきっかけが「原点回帰」にあたる映画『ジプシーのとき(1988年、監督:エミール・クストリッツァ)』というのがまた渋い

劇中で小津安二郎(『東京物語』)が好きだとか、ノーランに反発を見せるあたりに監督の色が出ている

『東京物語』を何も起こらなくて退屈と評するヨン、日常に潜む機敏について熱く語るチャンシル

思えばチャンシルの映画というものへの向き合い方が滲みでているといって良いだろうか

ラストの雪原を走る列車の映像は「何も起こらないように見える」のだが、レールが左右に振れて景色が微妙に変化する様は「映画に人生を重ねているチャンシル」が撮る映画だなあと納得できた

何気ないシーンから何を読み取るのか

それは人生をどう生きたのかという問いに似ているような気がする


いずれにせよ、観る人を選ぶ系の映画ではあるものの、私個人としてはとても楽しい映画だった

物語を読む立場ではなく、物語を紡ぐという目線で日常を切り取る人ほど、この映画の良さを感じるかも知れない

彼女の周りにはたくさんの人がいる

福とは、同じ目線で同じものを語り喜怒哀楽を共にできる存在のことだろう

また大家さんとモヤシの根を取るシーンが象徴的で「今、やりたいことをとことんやる」というのは秀逸で、未来がどうのよりも今何がしたいかに目を向けることはとても重要だと感じた

それを共有することができれば、人生は幸多く展開するのかも知れません

詳細評価

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