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あの頃。 (2020)

監督
今泉力哉
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3.28 / 評価:511件

夢中になれるものがあれば人生は幸せなのだ

ハロプロに心酔してしまったオタクたちの話と聞いていたのに、初っぱなに流れた、いや主人公が口ずさんだの歌は、名曲「サルビアの花」でありました。ちょっとビックリ。この曲は70年代の曲ですよね。
 さてさて、松坂桃李演じる主人公は、どうもミュージシャンを目指しているらしい。でも、上手くいかない、というより、本気でなる気があるのかないのか、そもそも夢中になれないと言った方がいいような感じでした。で、元気出せやと友人に渡されたのが松浦亜弥のDVD。これにビビッときて、涙が出るほど感動して、すぐさまCDショップへ走ります。ここで店員から渡されたのがイベントの告知チラシ。これに参加したことによって、彼の冴えない人生は、遅ればせながら総天然色の青春時代に突入するわけですね。おそらく彼には、学生時代から今まで、我武者羅に努力するとか、バカみたいにのめり込むとかいう経験がなかったのかもしれません。そしてもし、あのイベントに参加することなく、狭いアパートで1人松浦亜弥に陶酔していたら、こんな馬鹿馬鹿しくもくだらない、底抜けに楽しく、愛おしい時代を経験することはなかったのでしょう。
 このグループのメンバー(まさに神セブン)の性格分けが明確で、適材適所の配役でありました。誰一人として、入れ替えがきかないぐらい嵌まっていましたね。
 折も折、第164回の芥川受賞作は、宇佐美りんの「推し、燃ゆ」でありました。こちらは、アイドルを追いかけるオタク女性のお話でした。しかし、まったく内容が異なります。男と女の違いがあるのかもしれませんが、私はこの映画「あの頃。」が描いている世界の方が好感が持てました。アイドルにのめり込むというより、皆でワイワイすることにのめり込んでいったのですな。
 とは言え、いつまでもどんちゃん騒ぎをしているわけにもいかないのです。大人になるということかな。あのメンバーもそれぞれの人生を歩んでいくことになります。タイトルの「あの頃。」に、「。」という句読点がついているのがミソですね。終止符のかわりでしょうか?主人公は、あのハチャメチャに楽しかった時代を懐古しながらも、「今が一番楽しいぜ。」と呟きました。そして、おそらく、あの頃知り合った友人たちとは、何やかんや言いながら、一生つきあっていくことになるのでしょう。
 私自身も、勿論学生時代からの友人もおりますが、就職してから共通の趣味で知り合った友人とも、強い絆があるような気がしています。そしてまた悲しいことに、友人たちの中には、既に鬼籍に入ったり、自死した人もいます。すべてが切なくも愛おしい時代の思い出であります。
 おそらく、幾つになっても夢中になれるものがあれば、人生大丈夫でしょう。芥川賞「推し、燃ゆ」の女性は、これからがちょっと心配になるエンディングでしたが、こちらの映画の主人公は、大丈夫。時にはあの頃を思い出し懐かしみながらも、きっと前を向いて生きていくと思わせるラストでありました。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

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  • 切ない
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