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わたしの叔父さん (2019)

ONKEL/UNCLE

監督
フラレ・ピーダセン
  • みたいムービー 66
  • みたログ 76

3.76 / 評価:59件

意図的なのか本能なのかは賛否分かれるかも

  • dr.hawk さん
  • 2021年5月7日 23時03分
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

2021.5.6 字幕 京都シネマ


2019年のデンマーク映画
叔父に引き取られた女性が、叔父の面倒を見ながら酪農に従事する姿を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はフラレ・ピーダセン


原題は『Onkel』、英題は『Uncle』


物語はデンマークのユトランド半島の田舎町で酪農を営むクリス(イェデ・スナゴー)とその叔父(ペーダ・ハンセン・チューセン)が描かれて始まる

朝の5時半に起きて、身だしなみを整えたあと、叔父の起床介助をするクリス

無言の朝食を終えた後は、牛舎で餌やりをしたり、飼い葉の管理をしたりする毎日

冒頭の15分程度の映像は「ほぼ一日をそのまま映す」というドキュメンタリーチックな内容になっていた


ある日、難産になった乳牛の世話をしていたクリスは、逆子であることを叔父に知らせて獣医のヨハネス(オーレ・キャスパセン)に往診に来てもらった

ヨハネスは到着までにクリスが施した処置を褒め、助手にならないかと打診する

だがクリスは叔父の面倒や農場や牛舎の管理を理由にやんわりと断った


それでもクリスにその道を歩ませたいヨハネスはあの手この手でクリスを外に連れ出す

だが叔父との距離が遠ざかるたびに不安になって取り乱してしまうのだった


物語は叔父の介護と労働によって酪農から抜け出せないクリスを描いているものの、実際は「共依存」を作り出しているのがクリスであると仄めかしていく

女性目線による抑制と抑圧の日々

素直にこの物語を単純に読めばそう思うかもしれない

でも、この状況を作り出しているのは誰かと深く考えたとき、クリスのある特性が浮かび上がる

それは彼女が「マニピュレーター」ではないかという疑念である


マニピュレーターとは「行動操作をする人」という意味で、クリスの場合は「不幸な境遇を利用して自分の思う通りに周囲をコントロールする」という性質のものである

不幸な境遇自体は彼女が作り出したものではないが、それを利用しながら他者をうまく誘導し、あたかも悲劇のヒロインとして叔父をコントロールしているのである

クリスの周囲にいる男性は誰もが「他の道」「外の世界」という言葉を投げかけるものの、そこに留まることを決意するのはクリス自身である

誰もそこにいることを強要していないのに、何も知らない人が見れば「叔父のせいで自分の人生を閉ざしている女性」に見えてしまう

また叔父もクリスからの解放を望んでいるのに、彼女はそれを許しはしない

その理由は単純で、叔父は自分がコントロールできる唯一の存在だからである

彼女は自分の優位性を利用しながら、自分のやりたいことをやっている

獣医学の知識も彼女が管理する家畜のためだし、それらに愛情を持っていることもわかる

この映画では、クリスが獣医師の道を目指した理由は描かれないのだが、単純に動物が好きという意味合いが強いのかなと感じた

また同時に、極度の人嫌いの側面も垣間見られる

この映画で彼女と会話をする女性はヨハネスの妻エルセとの電話で話すシーンだけである

見事なまでにクリスの周りには女性の影がなく、彼女の異質性を感じる人物はいない

ここに恣意的な男女感があるのが炎上案件になりうるのだが、それも含めた意味合いにおいて、男性目線にはホラーに見えてしまうのである


いずれにせよ、この映画の特徴として叔父に名前がないということに大きな意味を感じる

叔父に名前がないことで、「クリスと誰かの物語」ではなく、「抑制を受ける女性の物語」としての抽象化を実現できているからである

クリスと同じような境遇を感じることができるということは、それだけ共感性を得られやすいということである

この映画はそうすることによって「第三者目線」を排除して没入させ、男性的には叔父目線、女性的にはクリス目線で物語が展開していく

そして、この妙技によって観客は監督の手のひらの上で踊らされてしまうのである

そう、まるでクリスに操られる叔父のように、そこに主体性を持っていると勘違いさせながら支配していく

なので、この映画を深読みすると結構危険な映画なんだなあと感じた

あくまでも個人的な見解ではありますが

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

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