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踊る海賊

踊る海賊

THE PIRATE

102

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4.0

それでは海賊がかわいそうだ。

1948年。ヴィンセント・ミネリ監督。海賊に憧れる少女(ジュディ・ガーランド)だが地元の金持ちで太った市長との結婚が決まる。最後にと出掛けた港で旅芝居の役者(ジーン・ケリー)と出会って一目ぼれされ、芝居のなかの催眠術で海賊への思いを歌ってしまうが、、、という話。ケリーは海賊のふりをして彼女に迫るが、実は結婚相手の市長こそ憧れの海賊だったというオチ。 海賊への憧れと結婚に揺れる少女、海賊のふりをする役者、海賊だったことを隠す市長。3人とも海賊を中心に自己分裂状態にあるという設定はとてもいい。あらゆる女性を同じ名で呼び、分裂症だと自分で語るケリーが、夢と現実に揺れる少女には一途になるという無理めの初期設定はその後の展開を期待させます。催眠術でふらふらと歌い出し、本心を表してしまうまではとてもいい。 ところが、ガーランドとケリーがくっつくのはいいとしても、その成り行きは、嘘をつく→けんかする→仲直りする、というありふれた関係にすぎない。せっかくミュージカルなのに、憧れが飛躍して制御できなくなるとか、役者のはずが本当に海賊になってしまうとか、そういうことがない。ガーランドは催眠術で無意識の世界へ、ケリーは嘘をついて海賊へと変化しているのに、最後には催眠術にかかるふりをするし、海賊も単なる犯罪者扱い。元の分裂状態に戻ってきているのです。それでは海賊がかわいそうだ。同時に、映画も含めたお芝居が現実にはまったく無力であると自己申告しているようだ。だから最後は二人でピエロなのでしょうけど。 ・・・そうはいっても、楽しくないわけではなりません(冒頭30分)。単に、フレッド・アステアの重力などないかのようなダンスが好きで、ジーン・ケリーのどたばたと歩くレスリングのようなダンスが嫌いだというだけです。ダンスで世界を変えてしまうアステアと、変わらない世界でもダンスをしてしまうケリーって感じでしょうか。

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