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踊る大紐育(ニューヨーク)

shinnshinn

4.0

シナトラのNY.NYは2コあるんですね。

1949年劇場公開のラヴコメディでミュージカル映画です。「ザッツ・エンタインメント」(74)で、冒頭の有名なワンシーンは観ていましたが、通しで観たのは今回が初めてです。第二次世界大戦や太平洋戦争に勝った国の戦後4年目。映画は世相を映すというけれど、内容がすべてにおいて、ひたすら明るく楽しい。元気いっぱい、夢いっぱいなのだ。アメリカ人が大好きな<善が悪に勝つ>という、単純なセオリーに酔いしれていた最後の時代。朝鮮戦争直前でベトナム戦争はまだ先の事です。同じ49年劇場公開の黒澤明監督作品「野良犬」なんかは、闇市やら、焼け野原やら、ただただ重苦しく、ひたすら貧乏くさい。やっぱり、戦争は負けちゃダメだなぁと。負けない方法があります。やらない事です。 ニューヨークに寄港した3人の水兵さんが、上陸許可と24時間の休暇をもらう。この親友3人組が思いっきり大都市の観光地を巡り、大都会のカワイコちゃん(死語か)を見つけるという、他愛もないお話。主題歌「ニューヨーク・ニューヨーク」の歌声に乗せて、お上りさん3名がニューヨークの名所を巡る。ここが、スタンリー・ドーネン監督の手際のいい演出と編集によりテンポが実にいい。個人的にスタンリー・ドーネンで一番好きなのはオードリー・ヘップバーン主演の「いつも2人で」(67)なのだが、独特のカメラワークが上品で、この方のテンポ作りにはセンスを感じる。振り付けは、すでにミュージカル界の大スターだった主演のジーン・ケリーが担当しています。この方はとても男性的な力強いダンスをします。優しく柔らかい繊細なダンスのフレッド・アステアとはハリウッドミュージカル界の双璧。どちらが好きかは好みです。流石にリアルタイムでは僕も観ていない(「ザッツ・エンタテインメント」(74)、「ザッツ・エンタテインメントPART2」(76)は大変勉強になりました。ミュージカル映画の入門書です)。 女性のタクシードライバー(ベティ・ギャレット)がフランク・シナトラに猛アプローチをするのが可笑しく、女性から行くのはハシタナイとされる当時の日本との<お国柄>の違いを感じる(女性のタクシードライバーが普通にいること自体、当時の日本とは違うのだ)。本作のシナトラには後の<ショービジネス界の大御所>という大物の雰囲気はまだなく、ヤセギスで顔も締まっている。ハンサムかどうかは好みだろうが、どちらかと言うと感覚的には、若い女の子に騒がれる<アイドル>に近い感じがあるのではないか。 美脚自慢のアン・ミラーが裾の長いグリーンのワンピースを着ているので、いぶかしく思っていたのだが、スカートの真ん中に深いスリットが入っていて、高速回転で踊り出すと、スカートがヒラヒラと真横に全開になる。見せ方のギミックは流石、ハリウッドです。 49年当時のニューヨークは実に健全で安全です。僕が映画館に足を運んだ70年代は「ゴッドファーザー」(72・お話は50年代だが)や「タクシードライバー」(76)など、重厚で暗く沈んだお話が多かったような気がする。「狼よさらば」(74)や「ウォリアーズ」(79)などを観て、「ニューヨークってコエーよ~」と思ったものです(笑)。

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