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返校 言葉が消えた日
2021年7月30日公開

返校 言葉が消えた日

返校/DETENTION/DETENTION

R15+1032021年7月30日公開

Krakosia

4.0

ネタバレ父さん世代が育った時代の台湾

・まず言えることは、時代背景や物語の親切な説明はついていないということ。私はゲーム版「detention」ではゾンビの気味悪さと強さに初話で挫折。Netflix版の「返校」を全話みてから視聴した。小学校時代に読み耽った小林よしのり氏の「漫画 台湾論」も役にはたっただろうか。結果からみればNetflix版を見てからの方がすんなりと話に入っていけた。それくらいに、既存のゲームあるいはNetflix版の物語を知っていることを前提に、芸術的ともいえる「方さん」と「魏さん」の夢の中の設定とされる精神・心理描写がメインの映画になっている。 ・思想の自由を学ぶ読書会を教師と生徒が無断で開催したために、関係者のほぼ全員が死刑を含む厳罰に処された、魏さんも厳しい拷問に処されたという話になっている。(日本敗戦後の)中国本土からの外来政権である蒋介石時代の台湾での暴政については現在も過剰な教育・報道を避けるように圧力がかかっている場合もあり、今も小中学校の多くや公共施設で蒋介石の銅像が置かれており崇拝を強要する学校・企業も多々あるという。そして、この時代に台湾は国連から撤退し、諸外国から国交を断絶され、長期間にわたり国際社会から孤立させられている。そういう意味でも「20世紀で台湾が最も暗い時代」だった。そのような時代の真実のような映画が国際的に放映されたことは非常に画期的なことである。 ・近年の台湾映画は演者の演技力が諸外国より大きく劣っていたり、バックセットがイマイチだったり、エキストラが少なすぎるし下手であるが故に矮小な映画が多いという印象が私にはあった。その中で、当映画は演技俳優も比較的優秀で、背景もCGを駆使していて上手に描写していたし、ストーリーも(Netflix版を見れば)分かりやすい展開になっていた。Netflix版では「教師の虐待」なり「生徒の復讐」だの「家庭の不和」だのテーマが二転三転していたが、映画版では「生徒達の精神世界」という1つのテーマに絞ってあり見やすくなっている。台湾映画に残る力作になるだろう。 ・欲を言えば、民主的な読書会が具体的にどういうものだったのか、方さんの両親にどんな問題があって方さんのお母さんがお父さんを当局に通報したのか、方さんはどういう状況で読書会のことを「白教官に諜報してしまった」のか、物語内で繰り返し描出される「国民党に忠実な白教官」がどんな人物像なのか、もっと突っ込んでだ描写が欲しかった。 ・「KANO」が私の爺さん世代が育った台湾、「返校」が私の父さん世代が育った台湾の映画になっている。私が幼少期などに学んだことでは分からなかった真実の台湾の姿のようなものを映画から教わったように思う。台湾に限らず、親世代やその前の時代は生まれていなかった私達にはイメージしにくいし、その時代を知る者たちの記憶の結晶の集簇がバックスクリーンに描出される方が説得力がある場合というのはあると思う。今後も私達が歴史的イベントから学んだ教訓や真実が映画やTV、本等の分かりやすい媒体として記録されていく、「表現・思想の自由」があり続ける世界であり続けてほしいと切に願う。

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