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返校 言葉が消えた日
2021年7月30日公開

返校 言葉が消えた日

返校/DETENTION/DETENTION

R15+1032021年7月30日公開

つとみ

4.0

自由を知り自由を求めたが故の悲劇

台湾国民党が中国本土の共産党を排斥しようとしていた時代、多くの書物が発禁になった。 本の内容ではなく翻訳者に問題があり発禁になったものが多いらしい。 そして本作では、共産党を支持するものが翻訳した本を読むのはスパイに違いないというわけだ。 この時代にこんなことがあったから教訓としましょうとか、そんなメッセージのようなものは基本的にはない。 観て何かを感じて考えることがあるのは人それぞれだが、作品に訴えたいことは存在しない。 終盤になると作品内でも語られるが、出来事を憶えておきましょうというのが作品の意義だ。 歴史系の作品などでは憶えておくための記録のようなものは多い。その系譜だ。 つまり、作品を観て、言いたいことがわからないというのは、ある意味当たり前であり「観た」ということで既に作品の目的は果たせている。 一応、自由についての物語で、そのことが登場キャラクターたちを追い詰めることになる、ちょっと皮肉が入ったところがいい。 締め付けられた時代の中でも自分の恋愛の意思を微妙に優先させてしまうのは、発禁になった本を読んだことで「恋愛の自由」という当時としては新しい思想を知ったからだ。 それを知らなければ密告者が現れることはなかったわけで、つまり自由を知らなければ密告もなく、自由を知ったからこそ自由でなくなったというわけ。 前半はホラーテイストの状況確認とキャラクター紹介で、後半は過去を振り返りなからのミステリー。 不気味さという意味では前後半で雰囲気が変わっても筋が通っていた。むしろ何だかよくわからないホラーな前半よりも現実的で直接的な後半の方が怖かったと言えなくもない。 面白く観ることはできたが、全体的に淡々としていて思ったよりも刺激的ではなく物足りない感じがある。 時代背景を理解した上で観る恋愛もののエンターテイメント性をホラーで担保しようとした作品だったと思うが、ホラーは怖くて観られない私でも普通に観られたわけだから、ホラーとして面白かったとは言えないだろう。 つまり楽しさをホラーで担保出来なかったわけで、軽めの恋愛パートが楽しめなかったのなら人によっては面白くないかもしれない。

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