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上映中

キャラクター (2021)

監督
永井聡
  • みたいムービー 733
  • みたログ 1,991

3.87 / 評価:1559件

キャラクター、その内面と意味について

  • TとM さん
  • 2021年6月13日 19時24分
  • 閲覧数 1323
  • 役立ち度 15
    • 総合評価
    • ★★★★★

その昔、ミュージシャンを志す若者が真夜中の十字路で黒い大男に出逢ったという。その夜を境に、若者は超人的な歌とギターテクニックを手に入れ、瞬く間にスターとなった。
彼は悪魔と契約したのだ。
ロバート・ジョンソンをめぐる「クロスロード伝説」である。
この映画「キャラクター」はその漫画バージョン・超リアル路線とも言える。

ジャンルは「サイコスリラー」ということになっているが、実際に観てみるとかなり緻密に作り込まれた群像劇である。
そして、テーマとなっているのはそのものズバリ「キャラクター」とは何か?だ。

殺人犯を目撃したことで、主人公・山城は自分の作品に足りなかったキャラクター、リアルな「悪」という強い記号を手に入れる。
山城はリアルに殺人を犯した男をモデルに、物語を紡ぐことにしたのだ。悪魔に魂を売った瞬間である。
一方の殺人犯も、あやふやな自我が山城の漫画に産み出された「ダガー」というキャラクターによって補強され、確かな「自己」になっていくのだ。

この二人だけでなく、山城の妻・夏美や、事件を追う刑事・真壁と清田にも、それぞれのキャラクターが滲ませる過去とストーリーがしっかり表現されている。
事件と関わるきっかけとなった漫画の背景に使う家のスケッチについて、山城が供述した通り「雰囲気が大事」なのだ。
この家は、人物は、どんな物語を持っているのか?その印象も含めた雰囲気。それがキャラクターなのである。

演出面にも抜かりがない。
オープニングは集合住宅の外から、明かりのついた窓を俯瞰するようなショットで、モチーフとされている漫画とのシナジーを感じさせる。
これ以降も四角く切り取られた枠の中に登場人物を配置するシーンを散りばめ、映像と漫画の境界線をあえてぼかす。
漫画のストーリーが劇中で起こる殺人事件とクロスオーバーする不気味さを、登場人物のセリフや演技以外でも、なぞるように強調していくのだ。
悪魔に魂を売った山城が、白い服から黒い服へと変化する衣装ワークも凝っている。その後、物語が進んでいく中で、山城の服はどんどん色が変わっていく。

もう一個、付け加えると今作の殺人鬼・両角のシリアルキラー造形も非常に満足。
シリアルキラー・ウォッチャーを自負し、フィクション作品は勿論、実在のシリアルキラーも追いかけた身としては、この理解と意味不明の中間にいる両角はフィクション界隈ではかなりのハイレベル。
シリアルキラーなんて、100パーセント理解するのは不可能。このわからなさ、妙な説得力、謎の行動力、明らかに偏った思考と嗜好。
そして何故か感じられる愛嬌。素晴らしいとしか言えないわ~。劇場で悶えたわ~。

あ、ここからネタバレ。






















名前を持たない(出自を定義する出生届すらない)存在だった両角は、まず両角修一という名前を手に入れた。
名前を手に入れたことで、憧れていた一家四人惨殺犯・辺見との関係性が出来上がった。
辺見と繋がり、実際に一家を殺害することで山城と出会い、山城のキャラクター「ダガー」としてさらに強固に自分というものが定義されていった。
自分というキャラクターが明確になる喜びは、名前のない怪物だった両角を「ダガー」としての更なる犯行へと向かわせ、山城の漫画との間に奇妙な師弟関係が生まれていった。
言わばもともとは両角を模倣して描かれた作品を、両角自身が模倣する「ファンの逆転現象」である。これは、両角と辺見の関係の中でも起こっている。

同時に、捉えどころの無い、空気のような存在だったはずの両角は、誰の目にもはっきりと認識できるようになる。
両角修一という名前、黒いコートの殺人犯。
だからこそ、彼は最終的に連続殺人犯として逮捕される。
拘束され、「ダガー」としての役回りを終えた両角には、もはや両角修一という名前すらなく、「ダガー」のような黒いコートも、ピンク色の髪も失い、まっさらな個体として法廷に立つ。
「僕って何なんですか?」
彼の最後の問いかけは、キャラクターを失った者らしいセリフだった。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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