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キル・チーム
2021年1月22日公開

キル・チーム

THE KILL TEAM

PG12882021年1月22日公開

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3.0

ネタバレ戦争で狂わされる悲劇と愚かさ

物語は、出国前のアンドリューの様子が描かれて始まる。 正義感と愛国心に燃え、アフガニスタンに渡ったアンドリュー。 現地では、地元住民を取り調べるばかりの、退屈な日常が続く。 だが、上官が地雷を踏んで爆死するのを目の前にし、衝撃を受ける。 改めて、自分がいる場所が常に死と隣り合わせであることを思い知る。 どこにテロリストが潜み、どこに罠があるか分からない、過酷な戦場。 代わりに上官として赴任してきたのは、歴戦の猛者と名高いディークス軍曹。 アレクサンダー・スカルスガルドが、クールなイケメンでカッコイイ! 誇り高き軍人の彼に出会い、アンドリューの士気は高まっていく。 彼は熱心な野心家で、自ら昇進を申し出るなど上昇志向が高い。 男ばかりの世界で、夜間など任務外は和気あいあいとした和やかな雰囲気。 ふざけ合う姿は、束の間戦場の緊迫感を忘れさせるものがある。 ある日の任務中、同僚が民間人の少年が武器を持っていたと撃ち殺す。 褒め称えるディークスだが、アンドリューは複雑な思いが残る。 本当に攻撃してきたのか、これは殺人ではないのかと葛藤する。 戦争は、敵を殺す事が使命であり、互いに殺し合う狂気の世界。 人を狂わせるのが戦争だが、慣れないアンドリューは納得がいかない。 尊敬すべきディークスは、治安を守る為だと、証拠も無く民間人を殺害。 アンドリューは、ディークスへの畏敬の念と正義感、良心の呵責に苛まれていく。 相手は丸腰で無抵抗なのに、なぜ殺害を続けるのか・・・。 アンドリューは秘かに父親に相談し、調査組織に匿名で通報する。 調査が入ったことで、内部告発した裏切り者探しへとスイッチする。 怖いのは、チームとして行動する以上、同化しないとやっていけないところ。 一人でも異端の者がいれば、一斉に排除へと方向転換する心理。 何が根拠だったかは不明だが、同僚の一人が裏切り者だとして犠牲になる。 集団でリンチにあい、そのまま病院送りとなってしまう。 アンドリューは恐怖から、通報を取り消すように父に懇願するのだが。 異変に気付いたディークスは、アンドリューの忠誠心を疑い始める。 その想いは全体に広まっていき、次第に孤立して追い詰められていく。 任務中でも、休憩中でも、訓練中でも、いつ自分も襲われるか分からない。 アンドリューの危機感と恐怖感が伝わり、ヒリヒリさせて切ない。 味方であるはずの同僚たちの行動にまで、気を付けないといけないなんて。 事態が悪化していく中、ディークスの命令である決断を迫られる。 従うアンドリューに満足げなディークスだが、どうなってしまうのか。 戦争モノだが、ド派手なドンパチなど一切なくて、戦いの描写も無い。 アクションなどを期待していたら、人間ドラマが肝で拍子抜けするだろう。 軍隊内部という小さなコミュニティでの、内輪揉めみたいな話なので地味。 だが、だからこそ上官のやり方次第で、安易に染まってしまうのが恐怖。 おかしいと思う者が出なければ、明るみにもなっていなかっただろう。 そんな自国の闇であり恥ずべき実話を、映画化している潔さは素晴らしい。 ラスト、彼らのその後は、エピソードのみで語られて終わる。 余計にスッキリとしない、モヤモヤした嫌な余韻が残ってしまう。 彼はともかく、終身刑は重過ぎるのでは・・・という気もした。 罰する事だけが正義じゃない、真に憎むべきは戦争そのもの。 武器を手にし、権力を手に入れたら、必要以上に行使する者は必ずいる。 本来の倫理観が麻痺し狂わせてしまうのが、戦争の悲劇であり愚かさ。 理想に燃える若き兵士と、戦争の過酷さと厳しい現実を知るベテラン軍曹。 双方の気持ちが分かるだけに、なんとも苦く、複雑な思いが残る作品だった。

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