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解説

『ヒメアノ~ル』『犬猿』などの吉田恵輔監督が長年続けてきたボクシングを題材に、成功が約束されなくとも努力し続ける挑戦者たちを描いた青春群像劇。理想と現実のはざまでもがきながらも前に進む3人のボクサーと、彼らを見守る女性の葛藤を映し出す。リングに上がる若者たちを、『聖の青春』などの松山ケンイチ、『記憶の技法』などの柄本時生、『OVER DRIVE』などの東出昌大らが演じ、ヒロインを『ザ・ファブル』シリーズなどの木村文乃が演じる。

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あらすじ

大牧ボクシングジムに所属する瓜田信人(松山ケンイチ)は、人一倍努力するも負け続きのボクサーだった。彼の後輩で日本チャンピオン目前の小川一樹(東出昌大)は、瓜田がひそかに好意を寄せる天野千佳(木村文乃)と交際し、全てを手にしたかに見えたが、脳の病が発覚し引退を迫られる。ある日、女性にモテたいという楢崎剛(柄本時生)がジムに現れる。

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映画レポート

(C)2021「BLUE ブルー」製作委員会
(C)2021「BLUE ブルー」製作委員会

「BLUE ブルー」敗れ去った者の背中は、時として美しい 吉田恵輔監督が紡いだボクサーたちへの賛歌

 ボクシング映画というジャンルに相対する時、無意識のうちに、こんなことを期待していたのかもしれない。それは高揚感を誘う「再起」。リングへと沈んだ者たちが、血反吐を吐きながらも這い上がる。その姿は確かに美しく、心に響くものだ。吉田恵輔監督が描出した拳闘の世界は、その期待には安易に応じず、挑戦者たちの人生を泥臭く肯定していく。

 本作で描かれるのは、挑戦者を象徴する“ブルーコーナー”で戦い続ける者たちの生きざまだ。誰よりも努力し情熱を注ぐも、負け続ける瓜田信人(松山ケンイチ)、抜群の才能とセンスを持つ小川一樹(東出昌大)、恋心をきっかけに“ボクシング風”を会得しようとする楢崎剛(柄本時生)、そして彼らを見つめるヒロインの天野千佳(木村文乃)。吉田監督が構想8年をかけて完成させた物語は、観客にシビアな現実を突きつける。強者は勝つ、弱者は負ける――そこには、神の心付けのような“奇跡”は生じない。

 吉田監督は、中学生の頃から現在に至るまで、30年近くもボクシングを続けている。そのキャリアを持って、本作では殺陣指導も兼任。一朝一夕では身に付くことのない視点によって「本物の試合」を完成させた。無論、俳優陣の後押しもあってこその結実だろう。2年という歳月をかけ“佇まい”を本物に近づけた松山、“代償”に揺れるさまを見事に体現した東出、吉田作品ならではのコミカルさも引き受けつつ“ボクシングに魅了される”という過程を示した柄本の存在抜きにしては、成し得なかったはずだ。

 「何箇所もジムを渡り歩き、沢山のボクサーと出会い、見送っていきました。そんな自分だからこそ描ける、名もなきボクサー達に花束を渡すような作品」とコメントを寄せていた吉田監督。30年という歳月の中、幾度となく訪れたであろう「見送り」の機会。そこには「再起」のようなドラマティックさは少なかったのかもしれない。だが、振り返りもせず敗れ去った者の背中は、時として美しく、他者に影響を与える。劇中で描く“思いの伝播”もさることながら、吉田監督が「BLUE ブルー」を世に放ったという事実も例に漏れず、ということだ。

 だからこそ、ラストショットが胸を打つ。吉田監督は、完成報告会の場で「僕のラブレターが詰まっている映画」と言い表してみせた。その思いは、瓜田が自然にとった“ある動作”に集約されているかのようだ。勝者も敗者も、リングに留まった者も、そして去った者も「ボクシングと向き合っていた」という事実は変わらない。ひとりでも多くの“見送られた者たち”に、この結末を目撃してほしい――鑑賞後、心からそう願っていた。(岡田寛司)

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2021年4月1日 更新

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