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上映中

竜とそばかすの姫 (2021)

監督
細田守
  • みたいムービー 1,352
  • みたログ 7,625

3.75 / 評価:6651件

作品理解が深まる予備知識(解説)

  • はねぴょん さん
  • 2021年8月1日 6時40分
  • 役立ち度 40
    • 総合評価
    • ★★★★★

「虐待されている子供が警察や福祉に頼れない社会は日本では考えられない」

という意見について。

東京の大田区では、
一般的な児童虐待の救出に関する、
「こうあるべき」が当てはまりません。

竜の家は「多摩川駅」周辺。
田園調布、高級住宅街なのです。

わざわざ坂の上にある設定なので、
「特にお金持ち」だと表現されています。

父親の社会的地位が高い場合、
(TVにも良い父親として出ているので、ステイタスにこだわる性格だと分かる)

父親が弁護士を付けて騒ぐと怖いので、
警察は民事不介入、民生員も知らんぷり。

親が子を自由にできる「親権」により、
「教育」で済まされてしまいます。

貧困家庭の虐待に児童相談所のメスが入らないのとはわけが違う。

ここが本作品の深い部分なのです。

助けに来たはずの大人たちは、

「お金持ちなのだから、子供が助けてと言っているのは、ただのわがままだろう」

という解釈で逃げます。

これが、モニター越しに叫んだ、
竜の、助けて、助けて、助けて、の悲痛なセリフの原因になる背景です。

竜が警察を呼んだとしても、
父親の暴力は全く罪に問われません。

むしろ、父親が、
「息子は嘘をついている。興奮しているだけだ」と語ると、

警察は子供を精神病院に連れて行きます。
これを、医療保護入院と言います。
(興奮して誰かを殴って前科にならないようにとか、自殺しないようにとかの名目)

何があったんですか?すら、
子供には一切の質問もしないし、

「僕は虐待されてます」と叫んでも、
警察はメモすら取らない。一切無視。

怪我をしていても確認しない。

「話しは後で聞く」と嘘をつき、
いきなり注射で眠らされ、

何も説明ができないまま、
気がついたら精神病院の個室に隔離されている。

呼んでも誰も来ない。

数日後、大部屋のある精神病院に移送され、
そこでも個室に隔離されます。
(ここを保護室といいます)

他人と会える大部屋に出れるのは、
概ね1週間ほどかかります。

隔離病棟の公衆電話から人権を訴えると、

「興奮してないか、親に仕返ししないか、
自殺しないか、医師が見極めます」

という流れになるが、
1ヶ月近くは出て来れない。

同じ事が2回目になると、
隔離は2〜3ヶ月にもなる。

その間、弟は誰にも守ってもらえない。

つまり、警察も呼べない。

「警察も福祉も敵でしかない」背景があるので、
竜は弟を庇ってひたすら耐えるしかない。

誰か1人でも「他人」が、
父親の暴力の現行犯の証人になれば解決するのに周りは知らんぷりする。

それが「高級住宅街」なのです。
(高級住宅街のイメージを下げたくないから誰も事件にしたくない)

こんなマニアックな「リアル」の背景、
作中できちんと説明されていないので、
普通の視聴者は分かりませんよね。

そして、物語のラスト。
作中では主人公が父親による暴行の被害者になったのが決め手になっています。

主人公に手を出してしまった竜の父親が、
へたり込んで逃げ出したのは、

血を見て、青ざめて、
我に返っているところから、

「つい…他人に暴行してしまった」
「社会的な地位が危ない」

という「自身の保身」による脅えです。

自分の子供への暴行は犯罪ではないと思っていたからそれまで怒ってるだけでしたが、

他人への暴行は犯罪だと理解している事が現れています。

その後はどうなのか?
これについての描写はありませんが、

完璧主義で社会的地位を保ちたいが故に子供を虐待するような人物ならば、

「どうか犯罪をバラさないでくれ」と、
恐怖に怯えて暮らすと思います。

話のテンポ上、大田区で実際に起きていた社会問題の説明が割愛されたのは仕方ないのですが、説明不足によって評価が下がるのは惜しいですね…。

女の子1人で竜の家に向かわせるのは危険か?
については、

社会的地位の高い人物が白昼堂々と他人に暴行する事はないだろうという判断で納得ができるのですが、

社会人でないと「信用を失う重み」の感覚は分かりづらいかもしれません…。

次に、
「家の特定」に繋がった窓から見える高層ビルは、
「高知県の人が分かるわけないだろ」
と思われるかもしれませんが、

多摩川から見える富士山を遮るビルなのでムカついて記憶に残りやすいです。
(川下りした時に見たのでしょう)

また、何故、舞台が高知県なのか?

これは私の解釈ですが、
教科書に載る「汚い川」で有名な多摩川と、

仁淀ブルー、「清流」で有名な高知県の対比が良かったのではないでしょうか。


[評価]
作品の内容は最高に良かったです。
特に歌の演出が良い。

細田守の作品らしい「日本」に加えて、
美女と野獣やマクロスを彷彿させるような演出の既視感は否めないのですが、
そこは「ファンサービス」でしょう。

現代の最高レベルのクオリティならば、
こんな風に魅せられるんだなと唸らせるものがありました。

詳細評価

物語
配役
演出
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音楽

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