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アトランティス

ATLANTIS

PG121092022年6月25日公開
アトランティス
3.7

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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(3件)


  • mos********

    4.0

    真の「クワイエット・プレイス」

    ロシアとの戦争を終えて1年後の2025年のウクライナの姿を描いた近未来映画でした。 制作はなんと2019年。言うまでもなくロシアがウクライナに本格的に戦争を仕掛けたのが今年2月ですから、ウクライナ側としては現在のような事態に陥ることを2019年の時点である程度予想していたということでしょうか。 直近のウクライナの歴史を振り返ればそれも頷けるところで、2014年の段階で親ロシア派のヤヌコヴィッチ大統領が失脚した直後、クリミア半島の親ロシア派が一方的に独立宣言してロシアに併合され、また現在主戦場となっているウクライナ東部のドンバス地方においても、ロシアの後ろ盾の下で親ロシア派が分離独立を画策し、その後継続的に内戦状態に発展しました。ゼレンスキー大統領が就任した2019年時点では、既にドンバス地方の一部地域は親ロシア派が支配していて、大統領選挙もまともに出来なかったようなので、仮に今年勃発した本格的な戦争がなくても、この映画の物語は空想ではなく、確固たる予測だったのかも知れません。 映画を観た第一印象は、とにかく音が少ない、静かな映画ということ。『クワイエット・プレイス』というホラーがありましたが、真のクワイエット・プレースと呼べるのは本作という気がしました。それもそのはずで、舞台となったのは戦場となっていた東部ドンバス地方であり、戦争が終わったとは言え街は破壊され、そこここに地雷が埋設されていて危険極まりない状況になっているため、基本的に一般人は住んでいません。そんな中を水の運送をしたり、戦没した兵士達の遺体を検査し、最終的に埋葬したりする業務に従事する登場人物たち。基本的に元兵士だったようで、PTSDに侵されている。そんな彼らの絶望が、手に取るように分かる映画でした。因みにエンドロールの場面は全くの無音でした。こんな映画は多分初めてだったと思います。 ただ、当方としては顔も名も知らぬ役者さん達ばかりで、また登場人物の背景も僅かな会話の中から読み解くしかないほど説明がないため、若干理解しにくいと感じた部分もありました。これはまあ致し方ないことだとは思いますが。。。 いずれにしても、先日ゼレンスキー大統領が、ウクライナの復興に100兆円必要だと発言したと報じられていましたが、仮に戦争が早期に終結しても、ウクライナの人達に平安が訪れるのは大分先のことになるのではないかと予感させる作品でした。

  • ローラー

    4.0

    これが2019年に制作とは!

    まるで予知夢のような映像に驚愕します。 2025年、戦後のウクライナ東部を描いた映像なのですが、何故2019年にこのような映像が作られたのでしょう? まるでロシアのウクライナへの侵攻があらかじめ分かっていたかのようです。 逆に言えば、ヴァレンチン・ヴァシャノビチ監督にはウクライナ東部地域へのロシアの軍事侵攻は現実の延長だったのでしょう。 それほどにこの地域はロシアとの緊張関係が続いていた地域なんですね。 自分を含め、国際社会にあまり認知されていなかっただけなんですね。平和ボケしている、と言われても仕方ないことです。 戦争に参加した若者が戦後、精神的に不安定になって命を絶ってしまうことはかなりあると聞いたことがあります。 この映像での2025年ウクライナもしかり、です。 そんな中、なんとか生き延びて、戦死した兵士の回収検死作業に従事することになった主人公セルヒーが生きる意味を見いだすまでを描いた作品です。 スクリーンにはまるで時計の針が100年くらい巻き戻ってしまったような、荒廃した風景が映し出されます。 人型を標的に射撃訓練をする兵士、 製鉄所の溶鉱炉、 労働者が(アメリカ人っぽい)経営者に解雇される映像、 地雷を踏み命を落とす一般市民。 汚染されて住めなくなった大地、 簡素な戦死者の墓標がランダムに広がっている映像、 戦死者の検死作業は生々しく、きっと今のウクライナでも実際にこんなことが行われているのだろう、と思いました。 しかし、映像ではロシア兵もウクライナ兵も同じように一体一体丁寧に扱っている様子でした。 今、ウクライナの現実は、日を追うごとに一般市民にも兵士にも死者が増えていて、戦死者をこんなに丁重に葬ることができているのかはわかりません。 リアルはフィクションを超えて悲惨になっているのでは、と思わざるを得ません。 映像は今は陥落してしまっているマリウポリで撮影されたそうです。 多数の市民が避難していたアゾフスタリ製鉄所も映っています。 生と死が隣り合わせのこんな過酷な境遇でも、荒廃した祖国でも、信じられる人が1人でもいれば、生きていこうと前を向くことができる。 音楽のない、色彩の乏しい世界にも、 人々の心の中を明るく温かく照らす灯はある。 現実のウクライナの未来を灯が明るく照らす日が来ることを信じたいです。

  • nn1********

    5.0

    一口寸評

    2019年の東京国際映画祭にて鑑賞。 毎年、予備知識もなく、チケットが手に入った作品だけを5本ほど鑑賞することにしている。これは、たまたまその一本。 映画の設定よりもずっと早く現実になってしまったことを嘆くしかない、真の予言映画だ。 以下、当時書いた映画評より。 ポスターは暗闇の中のサーモグラフィー映像。 ただ、画像ほど話は甘くない。 2025年、ロシアとの戦争に疲弊したウクライナが舞台。 帰還兵セルヒーは、働いていた製鉄所(マウリポリ?)が閉鎖され、別の仕事と並行して、戦死者の遺体を発掘するボランテイア組織で活動し始める…。 数えてはいないが、108分で30カットほどの徹底したワンシーンワンカット撮影に圧倒された。 環境が破壊され色が失われた荒地に、装甲車や戦車が行き交う。 それらのショットは、まるで動く戦場写真のように見えた。 戦争の爪痕、兵士たちの後遺症が、冷酷無比に描かれていく。 彼が愛し合うことになる女性は組織の同僚。 生き延びることを選んだつがいの体温は、いつまで保たれるのだろうか。 この映画によれば、今回のロシア侵攻はまだ3年は続いていくことになる。 とにもかくにも、この監督の最大の持ち味が固定カメラの長回し映像。 それゆえに、3年経った今でもワンカットごとの画を、かなり思い出せるくらいである。 本作の鑑賞を希望する方は、睡眠をよくとり体調を万全に整えた上で足を運んでもらいたい(画が動かないので睡眠不足だと睡魔に襲われること必至)。 音楽に加点がないのは、BGMが聴こえた記憶がないからだ。 間違っていれば、申し訳ない。 21年作の新作の方も、恐いもの見たさながらもちろん鑑賞予定である。

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