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ファーザー (2020)

THE FATHER

監督
フロリアン・ゼレール
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  • みたログ 637

4.02 / 評価:476件

忘れゆく人と残された人と...

  • yys******** さん
  • 2021年6月10日 2時29分
  • 閲覧数 688
  • 役立ち度 32
    • 総合評価
    • ★★★★★

本作は、2021年のオスカー2冠(主演男優賞、脚色賞)の作品。元々はフランスの演劇として公演され、数々の賞を受賞し、日本を含む世界中で公演された作品。ちなみに日本での主演は橋爪功。監督は、本作の原作者であり、映画初監督となるフロリアン・ゼレール。主演は、「羊たちの沈黙」以来2度目の栄冠に輝いた名優アンソニー・ホプキンス。そして、彼の娘役を演じたのは「女王陛下のお気に入り」でオスカーを獲得したオリヴィア・コールマン。本作は、一言でいうと「忘れ行く人と残された人と...」といった作品。

物語は、ロンドンの街に独り暮らす老人とその娘に訪れた奇妙奇天烈な物語。年老いた父親を持つアン(オリヴィア・コールマン)は、父親・アンソニー(アンソニー・ホプキンス)が自分の名前を間違う姿に落胆していた。父は、アンが雇ってくれた介護人に対して時計泥棒と呼び、今後も独りで暮らすことを伝える。しかし、アンは自分がフランスで新しい暮らしを始めることを告げ、最近の父の動向からどうしても介護人が必要だと食い下がる。そしてある日、アンソニーは、食事の支度をしている時に、戸が開く音に気づき家の中に見知らぬ男がいることに気づく。そこから、アンソニーは、自分の娘、そしてその周りの人々の顔と名前、そして過去との記憶が入り交じって混乱していく...と言った物語。

本作はとにかく”不思議な脚本”と言った作品。見終わった後、私の頭の中を真っ先に過ぎったのは「テネット」等のクリストファー・ノーランの世界感。映像の奇才で知られるノーランだが、本作は脚本によって不思議な世界感が生み出されていて、認知症の父親と娘の物語を”奇妙“な視点で描いたところは面白い作品であったと思う。物語の終盤、自身が認知症であることに気づいたアンソニーが一気に幼児化する瞬間は、これは認知症の視線から描いた物語だったのだと改めて気づかされた。

ただ、作品としては、どの視点で見るかを戸惑う部分もあるので、見る人によっては大きく意見が分かれると思う。お国柄というべきか、フランスとイギリスの共同制作ということもあってややトーンが暗く、和んだ演出もフランス人を揶揄するところのみで高低差があまり感じられなかった。個人的には、日本公演で演じた橋爪さんのイメージのほうが日本人的にはしっくりくるのではないのだろうか...本作のエンティングは、現実に目を背けがちに日本人にとっては辛く写ったように思う。

本作を観て、私は数年前に倒れた母を思い出した。高齢の母が急な高熱に襲われて入院したとき、帰省した私に病床で対面した母は、弟である叔父の名前を呼んだことがあった。今では治療の甲斐があり普通の生活ができるまでに回復したが、当時の母に忘れられる恐怖が私を襲ったことを思い出す。そう言ったところでは、本作の娘アンの気持ちに共感する部分は多くあった。勿論、ホプキンスの演技は秀逸で、厳格な父親が壊れていく様はちょっとしたサスペンスのようにも感じるのだが、最後はまったく空虚なものであることに気づいたときのショックは大きい。自分の両親との将来を考えさせられた作品です。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 不思議
  • パニック
  • 不気味
  • 恐怖
  • 絶望的
  • 切ない
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