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僕が跳びはねる理由
2021年4月2日公開

僕が跳びはねる理由

THE REASON I JUMP

822021年4月2日公開

min********

4.0

ネタバレ自閉症当事者が生きる世界を理解する

東田直樹さんのエッセイ「自閉症の僕が跳びはねる理由」を原作にイギリスで制作され、普通の人とは異なる世界を生きる自閉症の当事者たちを取材したドキュメンタリー。 自閉症絡みの作品はなるべくチェックするようにしている私。「いろとりどりの親子」でも自閉症の当事者を取材したパートがあったが、自閉症の当事者だけを取材した映画っていうのは個人的に初めてかも。 2005年に刊行された原作本「自閉症の~」は、当時13歳だった東田さんが自閉症の内面的な部分を当事者視点から語り、大きな注目を集める。その後、同作は34ヵ国以上で翻訳され、世界中の自閉症当事者やその家族に勇気や希望を与え続けている。 この作品では原作本の内容を踏まえつつ、世界各地の自閉症当事者の姿を取材した様子や、原作英訳版の共同翻訳者、デイヴィッド・ミッチェルへのインタビューを通じ、自閉症当事者から見た世界を映し出す。 映画に登場する自閉症当事者は順に、 ・インド:アムリットさん ・イギリス:ジョスさん ・アメリカ:ベンさん&エマさん ・シエラレオネ:ジェスティナさん そして各章の幕間には、幼い頃の東田さんをイメージしたと思われる人物として“少年”(その正体であるジム・フジワラさんも自閉症当事者)が登場する。 当初、東田さんに出演をオファーしたところ、「原作者の映画になってしまう」ということで断られ、今のかたちになったという経緯があるこの作品だが、確かにこうなって正解だったと思う。 随所で原作本の内容に触れてはいるものの、メインとなるのは多種多様な自閉症当事者の日常。世界中で東田さんのような人はたくさんいて、そして自閉症故の特性も人それぞれだということを、鑑賞者にそっと教えてくれる。 個人的には4組とも印象に残ったが、特に印象的だったのはジェスティナさんのケース。 長らく悪いイメージを抱かれがちだった自閉症だが、中でもシエラレオネでは“悪魔の病気”と評され、本人だけでなくその親まで責められるという。日本以上に自閉症をネガティブに捉えているなんて、なんとも許せない話だ。 そんな状況を変えようと、自閉症当事者が通えるような学校を設立したジェスティナさんのご両親の行動には頭が下がる。自閉症に対する人々のイメージを変えるためには、とにかく根気強く行動すること・・・ということを、このケースから教えてもらえた気がする。 他にも、普通の人とのコミュニケーションの難しさや親亡き後にどう生きるべきかなど、自閉症当事者が直面する様々な問題について提起しており、当事者として共感できる部分も多い。 そしてこの作品の最大の特徴は、自閉症当事者が感じている“普通と違う世界”が少しだけ体感できることである。 例えばベンさん&エマさんのケースでは、ふたりが文字盤でコミュニケーションをとる場面で、画面下にも1文字ずつテロップが表示され、最終的に一文となっていくかたちをとっている。 他にも扇風機や雨が普段とは違うかたちで映し出されていたり、耳を塞ぐシーンで少し聞こえにくくなったりと、映像や音で自閉症当事者の世界が表現されていて、普通の人との違いが理解しやすくなっていて良いなと思った。 当事者視点では、世界にはこんな自閉症当事者がいるんだ、と見聞を広めるきっかけ作りとなり、普通の人の視点では自閉症の知られざる世界に触れることができる。 恥ずかしながら原作未読の状態での鑑賞だったものの、それでもなかなか楽しめ、同時に自閉症当事者が生きやすい社会の形成について改めて考えさせられる映画でした。

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