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ドリームランド
2021年4月9日公開

ドリームランド

DREAMLAND

PG121012021年4月9日公開

Dr.Hawk

3.0

ネタバレ大人の男になることを夢見た17歳の衝動

2021.4.22 字幕 アップリンク京都 2019年のアメリカ映画 指名手配された銀行強盗を匿う17歳の青年の恋と青春を描いたヒューマンドラマ 監督はマイケル・ジョリス=ペイラフィト 脚本はニコラス・ズワルト 物語の舞台は1930年代のテキサス州 主人公のユージン・エバンス(フィン・コール)は家族とともに希望を胸にこの土地を訪れた だが土地は枯れ、砂嵐が作物を死に追いやる悪魔のような土地だった ユージンを連れてきた父は逃げ出し、母オリビア(ケリー・コンドン)は現地の警察官ジョージ(トラビス・フィメル)と再婚を果たす そして妹のフィービー(ダービー・キャンプ)も生まれ、慎ましい生活を送っていた 物語は大人になったフィービーがユージンの人生を回顧すると言う流れで、随所に彼女(語り手音声:ローラ・カーク)のモノローグが挿入される 「異父兄の話をする」と語り始めるフィービー テキサスに来た馴れ初め、そして兄と逃亡犯アリソン・ウェルズ(マーゴット・ロビー)との出会いなど、幼きフィービーが見たまま、そして大人になった彼女が兄に想いを馳せながら心を吐露していく 町は干魃に見舞われ、農家は仕事のない毎日を過ごしていた そんな折、銀行強盗の末、人を殺して逃げている女がいるとの情報が町を駆け巡る 懸賞金が懸けられ、男どもはその額に色めきたつ テキサス中の警察が血眼になって探している指名手配犯、彼女の名はアリソン・ウェルズ ペリー・モントロイ(ギャレット・ヘドラルド)とともに逃走し、ユージンらの近くにて逃走車両が発見されていたのである 物語は、干魃によって使われていない納屋を隠れ家にしていたユージンが、そこでアリソンを見つけるところから動き出す 彼女は警察の発砲で市民が死んだと言う 信じられないような話だったが、ユージンは彼女の言葉を聞き、そして傷の手当てなどを施す アリソンはメキシコに逃げる計画を立てていて、ユージンに車の手配を頼むのであった 物語の主題は「自由」であり、義父との関係性から「大人になれれば」とユージンは思っている 17歳と言う大人でありながらも子ども扱いされる微妙な年頃に、大人の女性を知る 愛を盾にして、己の自由のための逃走が始まるものの、その先に待つ未来は決して明るいものではなかった 結局のところ、自分のために「逃げている」ユージンは、自分を認めてくれる存在を渇望していて、そこにアリソンが現れた 性的な衝動も彼を突き動かし、アリソンの背景にある男の影をつい追ってしまう 終盤ではアリソンのついた嘘をユージンが暴く中で、彼が行動理由を失うところが描かれていく フィービーにもわからない兄の衝動 それを回顧録として紡ぐところに、兄への想いが垣間見える また、フィルム映像が幾度となく挿入され、それはフィービーが思い描く「兄の理想」だったように思えた メキシコの海で水着で泳ぐアリソン その肢体が赤く染まっていく演出は、最終的に夕日に染まる大地へと姿を変えていく 「逃げて」と言ってしまった自分の気持ちを振り返るように、フィービーは兄を理解しようとしながら、その時の自分自身を理解しようとしているようにも思えるのである いずれにせよ、テキサスを離れたいユージンが様々な「理由」を手に入れる中で、その理由が「周囲の人々の選択の末に自分に残されたもの」だと知る映画だった 友人ジョー(ステファン・ピン)の引っ越し、義父からの抑圧、そしてアリソンの目的 お膳立てされた「理由」に自分の心を隠して逃走するユージンは、最終的に喪失によって自分の弱さを知る 義父が最後に息子を撃たなかったのは、その衝動が理解できるからではないだろうか 美しくも切ない物語は、語り手のトーンによって寓話にも思え、兄が夢見た楽園の儚さを説いていく 重ねた体は嘘だったのか それが本作が描くドリームランド(天国)の無慈悲な現実だったのかもしれません

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