レビュー一覧に戻る
茜色に焼かれる
2021年5月21日公開

茜色に焼かれる

R15+1442021年5月21日公開

ネコと映画と人生

4.0

現在を生きる《自分自身の姿》が此処にある

私がこれまでに鑑賞した作品(邦画•洋画を問わず)の中では『コロナ禍以後の社会』を映した作品は本作が初でした。 【ストーリー評価】★★★★★ 作品は 主人公である『良子』の夫を《某・自動車暴走事故》をモチーフとした事故が襲う導入部から始まります。 その先の出来事については(おそらく)他の方がレビューに書いていると思うので此処では省きますが、良子も含め本作に登場する人物の多くが《自分だけの理屈で思考•発言•行動をし 他人の気持ちを慮る余裕(寛容さ)を持ち合わせていない》言動を見せます。 …が↑ソレは「フィクションの中だけに存在する嫌なヤツ」と言う訳ではなく、おそらく『現在を生きる全ての人の中に少なからずある部分』を顕在化したモノなのだろうと感じました。 『現在の世の中』や『自分の中の薄暗い部分』から目を背けたい方には 正直重過ぎるストーリーかも知れません。 しかし、本作の様な物語こそが《自分を見つめ直す》良い機会を与えてくれると思います。 【演技・配役評価】★★★★★ 主要キャストの内《尾野真千子さん》と《永瀬正敏さん》に関しては、ベテラン俳優ですし演技力に関しては文句無しです。尾野真千子さんの熱量と永瀬正敏さんの纏う空気が素晴らしかったです! また良子の風俗店での同僚となるケイ役の《片山友希さん》も、以前に鑑賞した『君が世界の始まり』の時の女子高生役とは一転して、この世の中の様々な汚い側面を見せつけられ 若くして「哀しみと諦めの人生」を生きている風俗嬢を好演しておりました。 実質的には★6あげたい位です(笑 配役に関しては、ほぼ全ての役がハマっていたと思います。中でも個人的には、良子の息子の純平を演じていた《和田庵くん》の配役は「この子だからこそ」だと思わされました。 演技的には「まだまだこれから」と感じましたが、彼の『声や肉体』からは 少年から大人への過渡期を感じられ、純平は彼にとっての適役であったと思います。 【演出評価】★★★★☆ 物語の始まりとなる『交通事故』こそ 良子や死んだ夫である陽一には責任が無い事ではあるけれども、それ以外の理不尽に関しては《今は亡き陽一や 残された良子自らが》招いたり背負い込んだりしている部分があったと思います。 そんな良子や純平やケイが身を置く《理不尽な境遇》や 彼らが感じているであろう《怒り・哀しみ・葛藤・苦悩・ある種の希望》等を、『登場人物の僅かな台詞』『登場人物の露骨な行動』を通して、観客に分かりやすく伝えてくる秀逸な脚本・演出であったと思います。 まあ《人によっては》拒絶したくなるくらい不快な気持ちになるセリフや描写もあったと思われるので、☆をひとつマイナスして★4評価としておきます。 【映像評価】★★☆☆☆ このコロナ禍での撮影や 映画制作の苦労は相当なものであったと思われます。 その分評価を甘くすれば★3に出来なくも無いけど、そんな事をしても「誰も得をしない」ので 通常通りに評価して★2とします。映像的に特筆すべき事は 私の感覚では感じ取れませんでした。 作品冒頭の事故のシーンを《夕方のニュース番組が事故を簡易なCGで再現した》体で表現していた部分に関しては賛否が分かれそうです。 またラストの《夕焼けに照らされるシーン》では不自然さが目立ってしまい、「ここまで割と自然に来たのに 最後の最後で惜しいなぁ…」と思わされてしまい少し残念だったので この評価となりました。 【音楽評価】★★★☆☆ レビューが長くなったので簡潔に申し上げますと「選曲は良かった」と思います。 【総括評価】★★★★☆ あらすじを読んでも分かる通り「爽やかなストーリーではない」ですし、主要な登場人物の置かれた境遇は 非常に理不尽ではあります。 けれども そんな境遇は「現実にも充分有り得るモノ」だと思うし、多くの方が感じた事がある感情が 本作には散りばめられている《共感度の高い作品》だと感じました。 それだけに 鑑賞していて「色々と身につまされたり」「色々考えさせられたり」する方も多いと思います。 個人的には『良い映画』だと感じましたし『多くの方に観て欲しい作品だ』とは思いました。 …が、皆んなが皆 そういう映画を求めている訳でも無いと思うので、《現実から逃避する為に映画を観る》タイプの方にはオススメは致しません。 それ以外の方は是非 劇場に足を運んでみて下さい。 ↑と言う事で、実質★4.5の《★4評価》とさせて頂きます。 【追記】 本作を「救いが無い話だと嫌だなぁ」と考え、鑑賞を敬遠しようとされている方の為に付け加えおきますと、《決して救いがない訳ではない》とだけ言っておきましょう。

閲覧数1,256