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あの夏のルカ (2021)

LUCA

監督
エンリコ・カサローザ
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  • みたログ 116

4.19 / 評価:79件

友情とアイデンティティの物語

  • YUKA さん
  • 2021年6月19日 23時28分
  • 閲覧数 1420
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

長年のピクサーファンです。

今作はエンリコ・カサローザ監督の初監督長編作品であり、ピクサー史上初めて子どもだけの世界にフォーカスした作品です。

エンリコ・カサローザ監督は、この作品の前に「月と少年」という短編作品を制作しています。宇宙の世界観を詩的に描いた作品で、そういった幻想的な世界観は「あの夏のルカ」にも共通していると思います。今作を気に入られた方は、ぜひ「月と少年」もご覧になってみてほしいです。

さて、「あの夏のルカ」はピクサー作品には珍しく、とてもシンプルで王道なストーリーでした。ひと夏の友情を描いた青春物語は、今も昔も魅力的ですね。
大枠のストーリーに意外性がなくとも、そのきらめきを十分に楽しむことができました。

そんな今作で、私が感動した点は二つあります。

まず、物語の舞台がとても限られた場所であったこと。全ての出来事は港町の中で起こり、その街も非常に狭いイメージで描かれています。そのため、劇場の舞台を見ているかのような感覚になりました。これは、子どもたちの世界がいかに狭く、閉じられたものであるかを語っているような気がします。
その証に、ルカとアルベルトの夢は終始「自由になってどこかへ行くこと」ですし、最後のルカのゴールは「遠くの学校へ行って多くを知ること」でした。まして、始めは二人にとって港町こそが外界であり「自由」でした。
狭い世界を出ることが、いかに子どもにとって大きな冒険なのかを実感できます。

また、言うまでもなくこの映画はイタリアへの愛に溢れています。港町の風景の描写の美しさは本当に素晴らしく、その点も舞台を狭く限定したことの効果だと思います。

次に、ルカとアルベルトがシー・モンスターであったことについて。
二人は人間にバレないよう、シー・モンスターであることを必死に隠します。これは、自分のアイデンティティを周りに隠して、周囲に馴染もうとする行動です。

アルベルトがジュリアへの嫉妬から自分の正体を明かしたとき、ルカはとっさにアルベルトを裏切り、自分は人間であると嘘をつきます。自分のアイデンティティを否定し、仲間をも否定してしまった瞬間でした。
仲間のことは大切に思いながらも、周囲に溶け込むために大事なアイデンティティを捨ててしまうという葛藤が描かれていて、胸が痛くなりました。

その後、自分のアイデンティティを受け入れたルカは、ジュリアや港の人たちという新しい理解者を手に入れます。その時、ルカのおばあちゃんは「あの子を受け入れない者はいる。でも受け入れてくれる者もいる。ルカはもうちゃんと見つけているよ」と言います。
私はこのセリフを、「自分を受け入れてくれない人はどうしてもいるけれど、理解して受け入れてくれる人が少しでもいるならその方がずっと大切なことだ」というメッセージに受け取りました。
このメッセージは、大人にこそ響くのではないでしょうか。この映画はハッピーエンドでしたが、現実にはみんな仲良く、というのは難しいでしょう。そんなときこの言葉を思い出し、自分を理解してくれる人への感謝を忘れずにいようと思いました。

ルカたちがシー・モンスターとして描かれたのは、他人とは違うアイデンティティを持つことの比喩だったのかなと思います。


この映画は、シンプルなストーリーだからこそ映える感情表現が光っていました。子どもは純粋に楽しみながら友情や愛について学べますし、大人は映像美やイタリア文化を楽しみながら、自身の人間関係を振り返ることができるのではないでしょうか。
幻想的な世界観が本当に素敵で、ずっと絵本をめくっているかのような不思議な映画でした。

子どもの瑞々しい夏が感じられる、この季節にぴったりの作品です。

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